
東京大学新聞社では、総長選考の第1次候補者9人全員に対面でのインタビューを申し込みました(うち、宮園候補はすでに候補者を辞退しています)。
9人全員からお返事をいただき、2人からはすでに対面で取材にお応えいただきました。さらに、複数の方から第2次候補者になった場合にのみ取材にお応えいただけるという回答をいただきました。
本記事では、理事・副学長で大学院総合文化研究科教授の森山工候補へのインタビューを掲載します。
(候補者取材の全体へはこちら)
──辞退という選択肢もある中で、代議員会からの推薦を受けたのはなぜですか。
代議員会の投票で選ばれた候補者名簿の中に私の名前があったということは、私が総長になることを望んでいる人が一定数はいるということです。その人たちの期待に応えるため、辞退という選択肢はありませんでした。
──東大の強みはどこにありますか
私にとって、東大といえば駒場のイメージです。1、2年生の時はもちろん、後期課程も教養学部教養学科に進学し駒場で過ごしました。当時の東大は本郷にしか研究科が無く博士1年までの3年間は本郷で研究を続けました。大学院では文化人類学を専攻したのですが、フィールドワークから戻ると駒場に大学院総合文化研究科ができていました。それで復学後は駒場にいましたし、大学教員になってからも駒場が職場だったので、私にとって東大と言えば駒場のイメージが強いです。
そして駒場の良いところといえば、今でも続く進学選択制度です。受験の際に専攻まで絞り込む必要がなく、後から自由に選ぶことのできるためカリキュラムの自由度が高い。あまり関心のなかった授業も受けられ、自分の関心を新たに発掘することができる制度は良いと思います。
──6年間の総長任期では、どのようなことに注力したいですか
学内行政の仕事に携わって、進学選択が作る自由かつ自主的に学習できる仕組みを後期課程でも発揮できれば良いと考え、後期教養教育科目や全学部共通科目といった学部学科の縦割り構造に依存しないカリキュラム作りも試みました。現在は、これらの認知度を上げようと取り組んでいます。
また、新たに「サブメジャー制度」を導入したいと考えています。一部の学科では「副専攻」という名称で採用されていますが、全学的な導入を検討します。ただ、例えば医学部医学科は国の指導でカリキュラムが定められていて、カリキュラム上のゆとりが少ない。一方で、教養学部教養学科や教育学部ではサブメジャーを習得する余地が比較的大きい。学部学科間の差異も視野に入れつつ、サブメジャーの全学的な展開を考えています。
東大の自由な学びの場であるところが好きなので、それをより多くの学生さんに提供できるような工夫をしたいと学内行政に携わる人間として思っています。
──数は多く、独立性も高い部局を、総長はどう束ねていくべきだと考えますか
歴史的経緯から部局の独立性が高く、本部と部局の見解が折り合わないこともあるでしょう。総長にリーダーシップやガバナンスが求められる現状で、藤井総長は非常に強いリーダーシップをとっていると私は評価しています。全学を巻き込むプロジェクトやプログラムを実施する際、全ての部局の意見を聞き、合意が取れるかどうかを事前に判断した上で提案・議論する。必要ならば何回でも説明会を開く、というのは私も重要視している部分です。
先ほど話に上げたサブメジャー制度は部局間の壁を壊すものです。一方で部局の独立性も大切で、全学的なことについて、部局が一致できるプロジェクトを作らないといけません。とはいえ、部局の壁を低くすることも必要だと思っています。研究の面では、研究者同士が互いに刺激し、交流する場をより多く設けることで部局同士の壁を下げる。教育の面では、サブメジャー制度などがその役割を担います。部局の流動性を高めることの必要性は感じていますが、当然部局の賛成がないとできないので、必要性を認識してもらうためには熱心に意見交換や対話を重ねる必要があると考えます。
──藤井総長は「対話」の重視を掲げていました。藤井総長の「対話」についてどう評価していますか
学生、留学生、職員、教員との対話など藤井総長はいろいろな機会で、いろいろな人に対して言葉のやり取りをしていらっしゃいます。様々な職種や階層の人と対話の機会を持つことで、総長の学内でのプレゼンスが高まっていると評価しています。
ただ、どこかで部局と本部のような対立の構図を乗り越える必要はあります。新たな制度を作る際の意見交換や説得のための議論は重要です。相手を説得するためにデータや情報を集め、一定の論理で組み立てて相手に提示する。相手も同じことをして、どちらが相手を説得できるかになる。けれども本当の意味での「対話」はそういうものではないと考えます。
例えばプラトンの一連の著作著述である『対話篇』では、ソクラテスとその論敵が対話します。そこでは説得が目的ではなく、対話すること自体が目的になっている。ここで最も大事な点は、対話によって対話に参画している人々全員が変わることなんです。主張する人は変わらないが主張を受け取る人は変わる、というのは説得です。これでは対話にはならない。双方向的に変わる必要が出てきます。部局と本部、学生と大学といった対決の構図ができてしまっている場合が多いので、それを乗り越えてフラットな立場で語るために必要なのは、やはり「対話」だと思います。一方で「意見交換」や相手の説得を目的とした「議論」のような対話以外の話し合いも重要だと思います。
授業料の改定は学生さんの関心が非常に高く、学内で大きな話題になりました。学生や保護者に負担をかけているのだから、この増収分は学生のために使用する。それが藤井総長の約束だったので、そのための仕組みを今いろいろ組み立てています。
他にも、国際卓越研究大学(卓越大)へ採択されればお金の使い方を考える必要が出てきます。不採択になった場合には、卓越大の体制強化計画に組み込まれた研究面での流動性を担保するための方策が実施できなくなってしまいます。
財務状況に関しては、年度ごとの赤字処理をどうするかも重要です。そのためには学内だけでなく学外との連携、政府や企業との取り組みが必要になってきます。社会連携担当の執行役が飛び回ってくださって、寄付金を集めています。財務の専門家にも理事として来ていただいているので、様々なご提案を総合し、東大の力にしたいです。
──国際卓越研究大学(卓越大)の意義をどのように考えますか
やはり活動の幅を広げられることに意義があると思います。ただ、これまで活動の場を広げてきたことにより財務状況が悪化したという考え方もあるでしょう。赤字の補填に助成金を使うのではなく、あくまで卓越大に合わせて策定した独自の事業を実地に移すことで東大の質的な向上を図ることが目的です。藤井総長の言うような大学ランキングの順位を上げることを視野に入れつつ、助成金の一部分を国際化に使うことになると思います。
デメリットとして大学のオートノミー(自主的な決定)をどこまで担保できるか考える必要もあります。お金を出すから言うことを聞けと言われたら、それはもう毒饅頭のようなものです。あえて食べない選択肢もありえたとは思いますが、現在はもう東大全体、本部・部局全体として卓越大の認定に向かっているので、ここはやはり採択されたいと思っています。
しかし、医学系研究科などでの度重なる不祥事が、審査に関わっているアドバイザリーボードの方々の心証を悪くしているのは確かです。だからこそ、藤井総長はリーダーシップをとってガバナンス改革やリスク管理を実行しています。楽観視はしていません。認定されるかどうかは五分五分といったところです。
──藤井総長の6年間をどう評価していますか
研究教育だけでなく、財務や東大のいろいろな仕組み・システムを良く理解した上で、全体的な観点から大学を俯瞰して、要所に適切なインプットを施されているのは非常に評価すべきだと思います。これといった失政は特に思い当たりません。
財務状況を改善するために外部の理事にお入りいただいたり、投資担当の執行役を置かれたりと、専門家に任せつつ意見を述べるやり方には信頼感を持っています。専門とする工学だけでなく、人文学についても興味を寄せて理解を示してくださったので、6年間を振り返って考えても大変良い総長だったといえます。
今後の方針について扱うべきポイントの一つはUTokyo Compassです。東京大学憲章は誰もが引き継がれていくものだと疑わない一方で、UTokyo Compassを藤井総長の所信表明だと思っている人は多いでしょう。あくまで五神総長のつくったビジョンペーパー(東京大学ビジョン2020)が失効したから新たに作ったものだとする見方です。ところが、実際には20年後、30年後といった中長期的な将来像が描かれています。だから、新しい総長は、藤井総長の路線を引き継ぐにせよ別の路線を歩むにせよ、当然新しいペーパーを作るものと考えられてはいけないでしょう。
活かすところと捨てるところを考え、UTokyo Compassに部分的に縛られる必要性があると考えています。これは同時に藤井総長に対する批判点でもあって、藤井総長以降の総長の行動を縛ってしまいます。これが逆に、新しい総長が藤井総長と差別化するために方向性を刷新した運営を生み出す、とならないかも心配です。
──DEIについてどのように考えますか
女子学生や地方出身の学生さんを更に東京大学に呼び込むという意味で、中等教育へのアウトリーチは必要です。学生と教職員の国際化についても、現在実行中の施策を拡大したいと考えています。2027年発足のUTokyo College of Design(UT/D)では、学生さんたちが孤立せず、他学部の学生と上手く混ざれるよう合同の授業やワークショップができると良いです。廃止されるPEAK(教養学部英語コース)は留学生のプレゼンスが大きかった一方で、一般選抜などの学生と混ぜることが十分にはできなかったので参考材料にしたいです。
私が作成作業をリードした「東京大学における性的指向と性自認の多様性に関する行動ガイドライン」では、アンコンシャスバイアスという言葉が出てきます。自分の中にバイアスがあると知ることは多様性を得ることにつながり、多様性に関する感受性が豊かになっていきます。そうした啓発活動は大切だと考えています。
──27年秋に新学部・UTokyo College of Design(UT/D)が創設されます。UT/Dの役割をどのように考えますか
一つはカリキュラム内容です。キーワードになっている「デザイン」を人文学や社会科学、自然科学でどう考えていくのか。ファッションデザインではないことは明白ですが、インダストリアルデザインでもない。現在、様々な意味で「デザイン」は使われています。社会全体に対し、社会課題を発見し、どう解決に導くのかというプロセスそのものがデザインであり、目的や手段など様々なものがその対象です。UT/Dを通じて、この意味でのデザインが日本社会に浸透していくならば、新しい価値観を学ぶという意味で重要だと思います。
もう一つは学生です。日本国籍の者と留学生が概ね半分ずつという構成の下、全て英語で授業を行います。PEAKを先駆けとして東大が試みてきたことを改めて実践することへの期待は大きいです。1年生の間は全寮制とすることで、国内出身の学生と国際学生の間での自発的な学び・交流が見込めると考えています。
──大学のガバナンスについてどのように考えますか
いわゆる企業のガバナンスとは相当違います。私は大学を知の公共財であると考えています。公共財であるということは誰もが利用でき、一方で誰に対しても資料・資金の提供を求められるはずです。大学のガバナンスでは、基本的に研究教育が指標として用いられますが、医学部の不祥事によって研究教育だけでは測れないとはっきりしました。だからこそ、社会との付き合い方について、寄付講座や社会連携講座のような企業と連携するもので、「大学だから許される」とは思わずに一般的な常識を当てはめる必要があります。そのためには企業のガバナンス研修に近いものを大学内に持ち込み、教職員、主に教員のマインドを変えていかないといけないと考えてます。
総長選考について、他の記事へはこちらから
The post 【総長選考2026】森山工候補インタビュー first appeared on 東大新聞オンライン.
【総長選考2026】森山工候補インタビュー 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-08-13 13:02:58
最新ニュース、世界のニュース、国内ニュースと本日の重要情報。ペタル・ニザモフ裁判官とフェザーズ・ペタル・ニザモフがブルガスおよびブルガリア全土で分析と調査を提供します。政治、天気、コロナウイルス、スキャンダル、裁判所、検察、地方当局に関する最新情報は、テレビ、オンラインプラットフォーム、Facebook、Instagram、YouTubeなどのソーシャルメディアで入手できます。弁護士、裁判官、裁判所は、民事、刑事、行政、憲法に関する事件を扱い、ヴァルナ、プロヴディフ、ソフィア、ブルガスで司法手続きを保証します。Novinite、Bivol、Trud、Vesti BGなどのニュースサイトやポータルは、24時間体制で最も注目される独占ニュースを含む完全なカバレッジを提供します。


