9月28日、東大の新総長が決まる。教職員による意向投票が行われ、その日のうちに新総長が決定する。
一方、6月16日、京都大学の次期総長に立川康人氏(京都大学副学長、大学院工学研究科教授)が選出された。京都大学では、総長選考の結果に学内で議論が起こっている。京都大学の総長選考を参考にして、東大の意向投票における注目点を探る。
①意向投票の位置付けはどうなるか
京都大学の次期総長に選ばれた立川康人氏は、6月15日に行われた教職員による意向調査では得票数が第3位(得票率21%)だった。
一方で、京都大学の総長選考・監察会議は、6月16日に選考結果を発表。立川氏は「求められる総長像」を満たし、国際卓越研究大学としての構想を実行できると評価して、次期総長として決定した。
京都大学の総長選考・監察会議は同日夕方に記者会見を開催。会見に参加していた学生記者によると、総長選考・監察会議の平野俊夫議長は、会見で数問の質問に対応したのみで退場。意向調査で第3位の立川候補をあえて選んだ理由について、説明はなかったという。
京都大学職員組合はこの決定を「有権者たる教職員、さらに学内構成員すべてに対する冒とくと評さざるをえない」として抗議声明を発表。今も説明会開催や再意向調査を求める運動を続けている。
国際卓越研究大学への認定に伴い、京都大では研究組織の「デパートメント制」への移行が進む。既存の研究部局は約20のデパートメントに移行する予定で、29年度末には完全移行を目指すが、どの研究者がどのデパートメントに所属するかはまだ明らかにされていない。大学院人間環境学研究科など、一部の部局は、対応する受け皿がないまま研究者ごとにバラバラに解体される予定で、学内では不安が漂う。
意向投票で得票数1位の候補が選ばれない事態は、24年の千葉大学の学長選考や25年の新潟大学の学長選考でも発生。学内の意向調査で1位ではない候補を、学長選考・監察会議が学長に選んだことを巡り、学内で激しい議論が起こった。
②東大における意向投票の位置付け
意向投票は、京都大学で沢柳政太郎総長が一方的に7名の教授を罷免し、反発を受けて辞任した沢柳事件の混乱を、沢柳の後任として収めた山川健次郎総長(当時、東大と京都大学の総長を兼任)が、次期総長を決めるにあたり各学部の教授会の意見を聴いた1914年の出来事に端を発する。
東大では、高等教育拡大の時流を受けて1918年に制度改革が行われた。その中で意向投票の採用が決定され、東大は文部大臣へ、教授陣の直接選挙で総長候補者を決定し、その推薦に従い総長を任命するよう要求した。これが認められ、東大に今の意向投票につながる選挙制度が誕生した。19年の初めての教員選挙では、山川健次郎総長の留任が決定された。
2003年施行の国立大学法人法では、学内・学外委員が同数となる学長選考会議が総長を選考すると定められた。しかし、東大は、総長を選考するにあたって従来からの「選挙」を維持。第2次候補者を対象に、有効投票の過半数を得る者が出るまで投票を繰り返す方式を維持してきた。
15年施行の改正国立大学法人法では、総長選考会議の権限強化が定められた。この改正は意向投票を禁止するものではない。東大は「選挙」から「意向投票」へ呼称を改訂した。
20年に制定された国立大学ガバナンスコードでも、学長選考会議は意向投票によらず主体的に学長を決定すると明示された。20年の総長選考にあたっては、意向投票に加えて選考会議による面接なども重視する旨が選考会議内規に追加された。
20年の国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の最終取りまとめでは、選考会議が意向投票を用いる場合には、その実施目的や位置付けの明確化を求める。
本年度実施の東大の総長選考にあたっても、意向投票が実施される。意向投票の目的は次期総長が学内構成員と信頼関係を築き、リーダーシップを発揮できるか確認することだ。
総長選考・監察会議は、意向投票は議論の参考材料の一つにすぎないことを強調している。総長候補者の資料や推薦書、面接等の調査結果、所信表明動画と共通質問への回答、そして意向投票の結果などを総合的に勘案し、総長選考・監察会議は次期総長を決定する。
③決定後にどう説明されるか
東大の総長選考・監察会議は、意向投票当日の9月28日に次期総長を決定・発表、そして29日に記者会見を予定している。
総長選考・監察会議は、原則これまでの会議の議事録も公開している。9月28日に次期総長を決定するにあたり行われる議論につき、どこまで詳細に議事過程が公開されるかも、注目される。
総長選考・監察会議は次期総長を、総長候補者の資料や推薦書・面接等の調査結果・所信表明動画と共通質問への回答・そして意向投票の結果などを総合的に勘案し、決定するとしている。総長予定者の、何をどう評価したのか、十分な説明が提供されることが期待される。
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