卑依璠大学院生(研究当時)、浅野友子講師(いずれも東大大学院農学生命科学研究科)らの研究グループは、1950年代半ばから80年代にかけて、愛知県瀬戸市の生態水文学研究所白坂試験流域において森林の年蒸発分散量が長期平均よりも少なかったことを明らかにした。成果は4月23日付で『Hydrological Processes』に掲載された。
森林流域の蒸発散量(地表面から蒸発した水分量と植物から蒸散した水分量を合わせた量)は、水資源の管理に必要で、森林や土壌の状態と気候環境から影響を受けると考えられている。一方で、森林、土壌、気候の変化についての長期的なデータは少なく、これらの要因が蒸発散量に及ぼす影響への理解は十分ではなかった。
本研究では、1930年からほぼ同じ方法で続いている愛知県瀬戸市の生態水文学研究所白坂試験流域の気象・水文データを解析。50年代半ばから80年代にかけて、森林の年蒸発散量が長期平均より約50mm少ないことを発見した。この流域では60年代後半から80年代初頭にかけ、森林の成長や土壌の回復により蒸散量が増加する効果が期待されたが、実際には蒸発散量が減少していた。白坂試験流域での観測地や名古屋地方気象台で観測された日照時間・日射量を用いて日射量を推定したところ、この期間は流域での日射量が少なかったことが明らかになった。この時期は高度経済長期による大気汚染が深刻化した時期と重なることから、蒸発散量の減少は大気汚染やそれに伴う日射量の減少によるものだと考えられる。80年以降は白坂試験流域では日射量が増加し、90~00年代には蒸発散量も増加したものの、09年ごろからは減少がみられる。この原因はコナラの大量枯死(ナラ枯れ)と考えられるが、詳細は解析中とした。
本研究では、森林や土壌に加え気候などの外部環境も森林の蒸発散量に影響を与えることが示唆(しさ)された。大気汚染が蒸発散量に影響することが明らかとなり、地球環境の変化を抑えるためには温暖化や環境汚染などの人為的な変化を最小限に抑えることの重要性が改めて示された。
論文情報
Bei, Y., Asano, Y. (2026). Long-term changes in evapotranspiration in once-degraded mountain catchments: Insights from 93 years of data on forest and soil recovery and climate change effects. Hydrological Processes, 40(4), e70467.
DOI:10.1002/hyp.70467
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長期観測データにより大気汚染が森林の水循環に影響を与える可能性を示唆 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-05-03 15:38:13
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