サクラチル入学式 のっけからズレてる東大?
春。
東大に入って、さっそく「あれっ?」と思ったことがある。
入学式だ。この大学は、授業が始まってから、入学式があるのだ。
ざっと調べてみても、慶応や早稲田は4月1日。ほかの国立大や私立大も、4月の第1週に集中している。
ところが今年の東大の入学式は4月13日。世間の標準と、2週間もズレているのだ。
これじゃあサクラサクじゃなくて、サクラチルじゃないか。
東大は世の中とズレてるって、いろんなところで言われてる気がするけど、さっそくその序章かな?
プロ記者、そんなツッコミを入れたくなる。
それでも、せっかくだから僕は勤めている新聞社に許しをもらい、入学式に出席させてもらうことにした(感謝)。
やっぱり、日付モノは外したくない。さもしい記者根性だ。
手元のチケットによると、入学式の会場は東大キャンパスじゃなくて、日本武道館。もよりの駅は、地下鉄東西線の九段下。
このあたりは新聞社のメッカで、プロ記者にとっては庭である。こうして会社から歩いて行ける入学式というのも、OSSANならではの醍醐味だ。
ところが…。九段下に到着して驚いた。改札を出るなり、人、人、人。
エレクトリカルパレードでも始まるの?あいみょんのライブでもあるのか?と思うほどの大盛況ぶりだ。
ちなみに入学式は、午前中は学部生(大学生)、午後から大学院生という二部構成になっている。僕は院生なので、午後の部だ。
きっと院生向けはこぢんまりした式だろう、とタカをくくっていたのだけれど、これが大間違い。すごい人数、すごい熱気だ。
じつは東大は「大学院生うじゃうじゃ天国」であることを、あとで知った。実際こうだ。
今年の新入生の数、まず学部生は、文Ⅰ:423人、文Ⅱ:373人、文Ⅲ:496人、理Ⅰ:1165人、理Ⅱ:566人、理Ⅲ:100人───で計3123人。
いっぽう大学院はというと、修士課程で約3090人。
学部生とほぼ変わらないボリュームじゃないか!
恩恵にあずかっている身でいうのも何だけど、どうなってんの?お国の政策。
ただ、女性の割合は、学部よりも院のほうが、圧倒的に高い。ちょっと意外かもしれないけれど、修士課程や博士課程の女性比率は、25%を超えている(東大新聞調べ)。
これはアカデミアへの女性の進出、また多様化という点からみると、望ましい傾向であろう。
まったく僕が言うことではないが、女性も臆することなくカモン、ジョイナスである。
ロンダリング勢と呼ばれて・・・
ところで、ちまたでは、他大学を卒業したのに院だけ東大に行くことを「学歴ロンダリング」と呼ぶらしい。うまいスラングだ。パッとしない最終学歴を、東大の院で上書きしよう。そんなスケベ心をうまく言い当てた、何とも味わい深い表現だ。
そして晴れて僕も、その一員になったわけだな。そんな魂胆じゃなかったものの、正面だけ正装の「びんぼっちゃま」のようで、なんだか恥ずかしい。

でも、たのむからこれだけは言わせて。ロンダリングなんてそんなカジュアルにいうけど、実際やるとなると、めちゃくちゃ大変なんだから。
もちろん受験する前に、僕はいろんな先輩に会って、ヒアリングを重ねた。ながらく社会人を経験したあとで大学院に入った先人たち、いや賢人たちのもとを訪ねて、アドバイスを仰いだのだ。
「そもそも僕みたいなOSSANが東大の院に入るって、可能なんですかね?」
すると、
「大丈夫。いけると思うよ。がんば~!\(^o^)/」
みんな、めちゃくちゃやさしい言葉をかけてくれた。
あの時の自分に言いたい。生存者バイアスにご用心。
僕は、受かった賢人たちにしか取材していなかった。落ちた死屍累々の声(というか骨)を拾っていなかったのだ。
あまり自慢することではないのだけど、僕のアタマは「凡」である。凡なればこそ、アタマより足。理屈よりネタ。そこに全神経を注いで、何とかプロ記者をやってきた。
しかしそんなもの、東大入試の前では、ひとえに風の前のチリに同じ。
正直なところ、受験勉強はとんでもなく手こずった。TOEICと死闘を演じ、研究計画書ではドロップキックをくらった。尿酸値も跳ね上が・・・
あっごめんなさい、話がそれました。
日本武道館での入学式に戻ります。
子どもの晴れ舞台は、親の晴れ舞台
それにしても何なんだ、この動員数は。
大学院の修士課程の新入生(M1)でさえ3000人以上いるのに、驚くことに入学式には、その両親もぞろぞろ。新入生1人につき保護者2人を召喚できるシステムになっているので、同伴者だけでも6000人にのぼる。
もちろん学生にも親にも欠席者はいるのだけれど、入学式にはMAX9000人が参加できるわけだ。

そしてやっぱり、院生といえども、親がついてくるのだな。この晴れ舞台、子供もうれしそうだけど、親の方がもっとうれしそうだ。みな満面の笑みを浮かべているように見える。さすがは東大。親にとっては、さぞかし誇りなのだろう。
人だかりのなかを歩いてたら、すでに授業で顔見知りになった男子を見つけた。「やあ」と手を挙げたら、隣にいた彼のお母さんに「どうもこのたびはお世話になります」と深々と頭を下げられた。あわてて、こちらもお辞儀をした。
5分後、ハタと気づいた。
ひょっとして教員と間違えられた?
たしかにプロ記者、このごろムダに円熟味を増してきた。リアルなとこ准教授くらいの風貌だ。ただの一兵卒の新聞記者なのに、せつない。
後半に続く。
【後編はこちら】
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プロ記者、東大新聞に入る。第2話(上) 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-07-30 03:00:48
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