五月祭初日の5月16日、参政党の神谷宗幣党首の講演会を主催した団体「右合の衆」と、第99期五月祭常任委員会に対し爆破予告が送付された。同日の五月祭は午後2時ごろに打ち切られた。東京大学新聞社は当時大学側で対応にあたった森山工理事・副学長(学生支援担当)と、講演会の会場・法文1号館を所管する法学部の、宍戸常寿副学部長など、さまざまな関係者に取材した。五月祭常任委員会にも取材を申し込んだが、6月5日までに取材に応じなかった。当時あの場で何が起きていたのか、検証する。
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中止決定後、空白の2時間 その間何が
爆破予告から退構の呼び掛けまでに要した時間は4時間以上ある。その内訳は爆破予告から中止の決定が約2時間、中止の決定から企画への「停止」の呼び掛けが始まるまでが約1時間、中止と退構の呼び掛けまでが約1時間だ。
この間、何が起きていたのか。ここでは中止の決断から退構に至るまでの過程について情報を整理したい。
午後1時30分ごろに、本部前に委員が集められているのが目撃された。現役委員の1人も、初めて異変を感じたのは午後1時30分ごろだったと話す。無線で、緊急連絡用のチャンネルに切り替えるよう本部から指示があった。理由は告げられなかったが、当時神谷氏の講演会の中止を知らなかったこの委員は、神谷氏の講演会でトラブルがあったのではないかと考えたという。
しばらくすると無線から企画を(一時)「停止」するように無線で指示が入った。「中止」かと無線で尋ねた別の委員には「停止」と来場者や企画に伝えるよう説明があったという。現場の委員に停止の理由は伝えられず、来場者から理由を聞かれたら「安全上の理由」とのみ答えるように指示があったという。
午後1時50分前には、法文1号館法学部ラウンジの企画には企画停止の連絡があったと見られる。そして午後1時53分ごろから委員が企画に声掛けをして回り、間も無く企画のほとんどが停止された。ただし、屋内企画の一部は停止されないまま継続し、例えば法文1号館の文学部の教室で開かれていた講演企画は午後2時30分ごろに当初の予定通り企画を終了したという。
午後2時すぎの段階ではキャンパスへの入構が止められたわけではなかった。本紙記者も、午後2時10分すぎに西片門の外で来場者に入構を促す屋外企画の関係者を確認しており、全体への情報伝達には時間を要したと見られる。また他の企画が停止した影響もあり、五月祭委員会が所管しない生協購買部やスターバックスなどの構内の店舗はしばらくの間混雑していた。
法被一枚で爆弾探し 初めは理由伏せ、反発の声で爆破予告明かす
午後3時前後から五月祭委員により企画の中止が呼び掛けられ、午後3時19分には全企画の中止と企画構成員のキャンパスからの退構の要請がウェブシステムで全企画に連絡された。午後5時前には来場者や企画構成員のキャンパスからの退構が完了。五月祭委員の役割は退構の誘導から、安全確認へと移った。
午後5時ごろに、多くの五月祭委員が図書館前ステージに集められた。複数の五月祭委員への取材によると、ステージ上の委員が、集まった委員たちに理由を告げずに不審物捜索への協力を求めたところ、そもそも中止に至る過程が共有されていないのは不当だと委員の中から複数の抗議があった。そこで初めて①爆破予告や殺害予告があったこと、②警察や大学側と協議した上で委員だけで対処することになったこと、③爆破予告があった教室はすでに安全確認済みで危険がないことが確認されたこと──が五月祭委員へ伝えられたという。その上で日曜日の開催を実現するための不審物の捜索に協力する委員は残ってほしい、帰りたい人は帰っても構わないとの発言があったという。実際に帰宅した人もいたが、その場にいた委員の9割ほどは不審物の捜索に参加したと見られている。

その後、五月祭委員は構内の不審物探しに当たった。本紙の記者も、実際に屋外企画のテントの中や茂みの中を捜索する五月祭委員の姿を確認している。ある五月祭委員によると、担当エリアを決め、「老人スタッフ」(元五月祭委員または駒場祭委員をスタッフとする制度)をリーダーとする班に分かれた。この時、五月祭委員内でも何を捜索すれば良いか基準は共有されず、不審物を見つけたら触らずに教えるよう指示があったという。ある五月祭委員は「不審物を見つけてから判断する姿勢で間に合うのか?」と上層部への不信感を語る。

爆破予告には「本郷・弥生キャンパスの各所に爆弾を仕掛けました」とあったそうだが、本当に不審物を見つけた場合どうするつもりだったのだろうか。ある五月祭委員は「みんな頭の中では、爆破予告はイタズラだと思って捜索していたと思う。のんびりガヤガヤ捜索していた」と話す。本紙の記者も「一番最初に見つけた人が命落とすんだから」などと話しながら不審物捜索に参加する五月祭委員を確認している。当時、本郷キャンパス内にいた文学部の学生も「キャンパスを奔走していた五月祭委員ももちろんいた一方で、笑ってはしゃぎながら巡回している人もいたので五月祭委員の危機意識は気になります」と話していた。

問われる説明責任 取材には回答なし
五月祭常任委員会が全企画を対象に中止決定の過程を説明したのは、16日に一時停止・中止を連絡、公表した以外は、19日にウェブシステムで行った連絡のみだ。
19日の連絡においては「現状できうる最大限の説明」として①爆破予告を受け、大学や警察と協議の上で中止の判断がなされたこと、②企画中止に伴って生じた不利益について委員会は責任を負えず、賠償も行わないこと、③今後改めて正式な説明を行うこと──などが示された。不測の事態においては中止や延期の可能性があり、その場合に委員会として責任は負えない旨をこれまでも説明してきたとし、安全面を総合的に勘案して中止を判断したという。
五月祭常任委員会は、19日の連絡で自らを「説明責任を果たすべき主体」とした上で、「皆様への説明責任を果たすべく力を尽くしていく所存」だと記した。しかし、東京大学新聞社では委員会に対して17日から複数回にわたって取材を申し込んでいるが、6月2日までの約2週間、委員会からの返信はなかった。6月3日に五月祭後初めて返信が来たものの、5日までに取材に応じてはいない。ある五月祭委員は個人で「取材には応じるな」と言われていると話す。
五月祭委員の選出母体の一つで、サークル代表者などから構成される教養学部学友会(学友会)学生理事会は20日、委員会に対し中止決定の経緯などの説明を求める公開質問状を出した。また、同じく選出母体である教養学部学生自治会(自治会)理事会は29日、委員会に対し中止の決定や安全確認の経緯・詳細や、今後の企画への支援策について情報公開を要請した。
五月祭常任委員会において、委員長を互選によって選ぶなど中心的な役割を果たす選出委員は、学友会や自治会といった学内の自治団体などから選ばれる。学友会の要求から約2週間、委員会からの返信はなかったが、選出団体からの要請に対し、2週間も何ら回答しないのは、自治団体のあり方として適切とは言いがたい。6月4日に学友会が回答を促す要求をしたところ、委員会事務局長が学友会学生理事会と自治会理事会に対して回答。新しい説明はされなかったものの、「来週中」(6月4日から見て)をめどに情報公開の準備を進めているとした。
大学本部の森山理事・副学長や法学部の宍戸副学部長が東京大学新聞社の取材に応じたのは五月祭のわずか数日後だった。それに比して、委員会の対応は遅いと言わざるをえない。引き続き、午前10時31分の爆破予告の受信から、午後1時ごろの大学本部への中止の伝達、午後1時53分ごろの企画の一時停止要請、午後2時58分ごろの中止決定とキャンパスからの退構要請、までの委員会の意思決定の過程や意図は不明のままだ。不測の事態であったとしても、数万人の生命が危険にさらされていたというならば、委員会の遅い対応は説明責任の果たし方として疑問が残る。
五月祭常任委員会は、内部でも十分な説明をしていないようだ。複数の五月祭委員は、今もなお、どこにどのような爆破予告が届き、どのようにして中止が決定され、そしてなぜ五月祭委員だけで不審物の捜索を行うことになったのか、16日の午後5時ごろに図書館前ステージで話された以上のことは、何も説明されていないと話す。17日の開催のため、生命を脅かしてまで捜索に当たった委員にさえ十分な説明がされてない可能性がある。
今後「説明責任を果たすべき主体として」委員会がどう中止に向き合うのか。そして駒場祭や来年の五月祭に向けた制度設計が行われていくか。東京大学新聞社では今後も取材を重ねていく。
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本紙は引き続き取材を続けて参ります。五月祭に関して気になるところがありましたら、こちらからお教えください。記事執筆の参考とします。
また、当時出展していた各企画の皆様へのアンケートも実施中です。どうぞよろしくお願いします。
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【検証 第99回五月祭】論点③ 法被1枚で爆弾探し 問われる説明責任も取材には回答なし 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-06-09 02:00:49
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