東大卒業生は他大と比べてつながりが希薄と言われている。しかし、2004年の法人化以降、卒業生と東大を、また卒業生同士をつなぐ取り組みも続いてきた。その一つがTFT(東大オンラインコミュニティ)だ。卒業生のつながりから何が生まれるのか、東大ディベロップメントオフィス卒業生担当の堺飛鳥さんに聞いた。(取材・宮井智明、丹羽美貴)
──現在堺さんはディベロップメントオフィスの卒業生担当ですが、現在の仕事について教えてください
まずは卒業生に、もう一度東大のことを考えていただくことが一番大きなミッションですね。毎年10月に開催しているホームカミングデイをはじめ、卒業生が「東大出身であることの意味」や、同窓生や母校とつながることについてあらためて考えていただく場や機会を提供しています。あわせて、各地の同窓会にお伺いして東大の現状をお伝えしたり、卒業生の方々から今の東大がどう見えているのかを伺い、その声を学内に伝えたりしています。
昨年度、東大の寄付金を集める部門と卒業生を担当する部門がディベロップメントオフィスに統合されました。両者を分けて考えるのではなく、大学にとって最も大切なステークホルダーである卒業生との関係を築き、その力を大学の発展につなげていくことを目指しています。
大学の次なるステージに向けて卒業生の方々を巻き込み、それを大きな力に変えていくことが私たちの仕事です。東大のさまざまな取り組みは、実は多くの場面で卒業生の支えによって成り立っており、海外体験プログラムなどでも同窓会の協力を得ながら学生の活動を後押ししています。

150周年チャリティとして、安田講堂で加藤登紀子さんのコンサートを開催します。加藤さんは東大紛争を経験している世代の卒業生ですが、大学としても東大紛争をどう位置付けるのか非常に難しい中で、関係性が途切れてしまっていた当時の卒業生たちともう一度つながる。そして過去にとらわれるのではなく、未来に向けて何を残せるか、何をしなくてはならないのかを一緒に考え直していく。そんな企画としてこのコンサートを位置付けています。
世界が分断される中で、音楽は、言葉や政治、信条を超えて伝わるというのが、このコンサートの根底にあります。音楽を契機に、分断を乗り越えるために私たちにできることを示したいという点で、加藤さんと協力して取り組んでいます。
また、印象的だったこととしては、東大女子の同窓会・さつき会のメンバーで、仕事を辞めて専業主婦になられた方の「とても東大卒だなんて言える雰囲気ではなかった、周りの人に隠して隠して生きている」という発言です。世代ごとに経験してきた背景はかなり違いますし、幸い、今の東大生はそこまで隠しているわけでもない、むしろそれを誇りに思う人たちも増えてきているのかなと考えています。ただその時々の社会的背景の中で生まれた思いを取りこぼしてもいけない。そういうつらい経験も取りこぼさず、今はそういうのが減ってきたことを「あなたたちは良いよね」というのではなく「本当に良かった」と、今の学生や未来の学生が自由で幸せに暮らせるように卒業生からも応援できる仕組みを作っていきたいと思っています。
活躍されている卒業生の方々にお会いするのは非常にうれしいことです。ただ、ロールモデルを示す中では、きらびやかな方だけではなく、さまざまな人がどう生きているのかにも関心を向けたいと思っています。数十年前の卒業生はみんなが同じような進路を選んでいたのが、今の卒業生の進路はバラエティーに富んでいて面白いです。
──卒業生担当が運営しているTFTとはどういうものなのですか
TFTは東大卒業生向けのオンラインコミュニティです。卒業生同士のつながりを図って、大学からのお知らせを届けたり、同窓会の活動を紹介したりしています。卒業生同士のネットワーキングを進めていくと、例えばキャリアチャンスにもつながったり、お仕事の取引相手や心置きなく付き合える仲間を見つけられたり、といった効果が期待できると思います。
大学は長らく研究と教育が主眼で、研究という意味では先生方、教育という意味では在校生がサービスの対象でした。でも、東大の卒業生はいろいろな過去の思い出を共有していますよね。そこでTFTは東大に対して思いを持ってくださる卒業生の方々も東大コミュニティの一員として取り入れていくことを目的に作られました。今もその精神を大事に意識して活動しています。

──TFTで現在、卒業生のつながりを作るために行っている取り組みについて教えてください
もっと双方向のコミュニティにしていきたいと思っていますが、システムや予算の都合でまだ実現できていません。現在は、大学から卒業生も参加できるイベントなどのお知らせや、卒業生団体紹介、大学の今の動きなどを、メールマガジンで広く東大の卒業生へお伝えしています。
他にも、卒業生団体と学生団体同士でやっているキャリア相談会などについてもTFTメールマガジンで広報協力をし、多くの人たちをネットワーキングする取り組みを行っています。私たちとしてやることが決まっているというより、むしろ卒業生団体や学生団体の方々からご提案をいただいたものを積極的に応援しているイメージですね。

──今後、取り組もうとしている構想はありますか
まずは卒業生データベースを充実させていくのが大事だと考えています。TFTは東大が法人化した2004年以降にできた、まだ発足から20年前後のデータベースのため、それ以前の卒業生の情報はなかなか集まっていません。現在ご存命と推定される卒業生が20万人ぐらいいるものの、登録してくださっているのは8万人ほどなんです。だからまずはきちんとデータを収集していきたいですね。東大新聞の読者の卒業生の方々でも、きっとTFTに登録してない方が多いと思います。ぜひご登録して、母校と、そして同窓会と再びつながってください。
もちろん既に登録してくださっている方々にも情報のアップデートをしていただきたいです。例えば業種別のイベントをご連絡しても「僕もう転職してしまったんですけど」みたいになりかねないわけです。情報をアップデートしていただき、そして私たちもそれに沿った情報を提供していきたいと思っています。
東大では数多くのイベントが開催され、オンライン講座も多くが無料で提供されています。ただ、その情報が実際には多くの卒業生に十分届いていません。イベント情報をもっと分かりやすく見える形にし、それぞれの興味関心に合った情報を届ける仕組みを整えていきたいですね。

──卒業生同士がつながると何が生まれるのでしょうか
私たちが予測していなかった化学反応が生まれるのが大事だと思っていますね。もちろんビジネスのつながりが生まれることも意図していますが、きっとそれを超えて何か生まれるものがあるんだろうなとは感じています。例えば隣で少し話した人の趣味が山登りで、それをきっかけに山登りを始めるとか。それは簡単な例ですが、最初はちょっとした、親睦を深めようとか興味関心のあるフォーラムに行こうとかでも、こっちの意図を超えて広がっていくことが同窓会活動の面白さです。
他の場所でも同じようなことは生まれるとは思いますが、同窓生同士だという意識があると、初対面の人と話す異業種交流会よりも会話のきっかけがありますし、親しくなるのが早いものです。何かをお願いする時もここに任せてみようという決断を少し早くできたりもします。同窓生というのは、コミュニケーションの最初の垣根を超えられる価値があると思っています。
先日研究者の先生とお話したのは、研究は一つの分野に限らず、いろんな分野にまたがるものが評価されるようになっているということでした。例えば自動運転を研究している人がいたとすると、法制度や自動運転ができる道路とできない道路との不公平、市町村の税負担など考えなくてはならないことがたくさんあります。技術を技術だけで済まさず、包括的にプロジェクト化するのが今非常に重要なんだそうです。
そういう時に「自分のプロジェクトがあるからどうか参加してください」と知らない人に連絡するわけじゃないんです。何かのつながりでたまたま出会った人とかと「それだったら実は僕、今こういうのやってて」「じゃあプロジェクト入りますか」という感じでつながっていくんですね。そういう意図していなかったつながりが生まれるのは面白いですし、アカデミアを卒業生という枠でつないでいって、新しいことにうまく昇華していけるといいなと思っています。
誰かと一緒に仕事をしたいと思っても問い合わせフォームから連絡するのはなかなか大変ですよね。それが出会いの場をセッティングするだけで次のステップにつながることがあるんです。そうやって東大の価値がどんどん上がるといいなと思っています。東大は10年間で世界のトップテン大学になるのを目標にしていますので、それに資するといいなと思っています。
【TFTに登録するメリット】
- 同窓生の検索
- メールマガジンの購読
- ホテルやレストラン、東大病院での人間ドックの優待
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/alumni/tft/index.html
登録は上記のリンクから行うことができます。

The post 卒業生をつなぐ 東大オンラインコミュニティ first appeared on 東大新聞オンライン.
卒業生をつなぐ 東大オンラインコミュニティ 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-03-27 01:00:18
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