
9月29日、藤垣裕子教授(東大大学院総合文化研究科)が次期総長予定者に選ばれました。意向投票では第2位だった藤垣教授への決定に、学内外でさまざまな言説が飛び交っています。東京大学新聞社は、今回の総長選考の実像に迫るべく、丹念な取材や学内での緊急アンケートを通して、東大構成員が何を考えているのか追い求めました。その成果として「総長選考特集号」をお届けします。読者の皆さまが大局的かつ多角的に今回の総長選考について考えられる材料になれば幸いに思います。
こちらのページでは10月13日発行の「総長選考特集号」の見どころを一挙に紹介します!
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徹底解説総長選①横並びの候補者政策 なぜ意向投票覆した(10-11面)
選考会議の発表などに注目しながら、予定を大きく越えて長引いた選考会議で、意向投票で過半数の票を集めた染谷教授がなぜ選ばれなかったのか、その文脈をたどります。
そして染谷教授と藤垣教授が、所信表明などで言及した政策案を比較。複数人の教員への取材から見えてきた、候補者の人物像とは?さまざまなポイントで、今回の選考理由について考えます。
徹底解説総長選②意向投票が「意向」投票のわけ 投票尊重から会議の主体性重視へ(12-13面)
今回の意向投票はその結果単体に焦点が当たりがちですが、その背景にある制度の変遷を見なければ、問題の本質を見落としてしまうかもしれません。大正期にまでさかのぼって投票の始まりを解説し、国立大学の法人化を経て、「総長選挙」が「意向投票」に変わる流れを細かく追っていきます。さらに、意外と知られていない2020年の総長選考の一連の「騒動」が与えた、思わぬ影響とは何か?国の動向や選考会議の議事録にも注目しながら、意向投票が判断材料の一つにまで変化する過程をたどりました。
【コラム】誰がどこに投票したのか(13面)
東京大学新聞社が独自に実施した緊急アンケートから、意向投票での文系と理系の投票先の違いや、1回目に誰に投票した人が2回目に誰に投票したかの関係を探りました。他にはないデータから見えてくるものとは何か?東大新聞にしか集められないデータがあります。
徹底解説総長選③覆った意向投票、どう受け止められたか(14面)
東京大学新聞社のアンケートに寄せられた教職員の意見や、独自の教員への取材を軸にして、今回の総長選考が学内に引き起こした感情の正体を探ります。意向投票を覆したことと、その後の説明不足は、何を生んでしまったのでしょうか。
総長選考決定会見・全文(4-5面)
9月29日に開かれた、選考会議の国谷裕子議長と藤垣裕子総長予定者による会見の全文を掲載します。藤垣教授は総長に決まってから、最初の表舞台で何を話したのか。ぜひご確認ください。
総長選考候補者インタビュー(6-9面)
第2次候補に選ばれたものの、総長には選ばれなかった4人の候補にインタビュー。それぞれの候補者が、一体どんな東大像を描いていたのか、東大の未来にはどのような選択肢があり得るのか、4人の提案を紹介します。
『総長選考特集号』発行責任者より
今回の総長選考。藤垣裕子教授が選ばれたことに、驚いた人は多かったと思います。
学生にとって、総長はどういう存在か──意外と学生にとっては、入学式と卒業式で2回見るだけの、とても遠い存在なのかもしれません。しかしながら、東大にとって、総長はまさしく、全体の方向性を決める存在だと言っても過言ではないでしょう。
法人化後の総長は、東大全体の方向性を示してきました。藤井総長は「UTokyo Compass」で、五神前総長は「東京大学ビジョン2020」で、濱田元総長は「行動シナリオ FOREST2015」で、東大の中長期の指針を示しました。誰が総長を担うかが、東大の未来そのものを占うことになるのです。
藤垣新総長がどんな東大を築いていくのが良いか、学内で今後とも議論が続くことを切に望みます。
ところで、今回の特集号の背景には、編集部にとっても異例の決断がありました。当初の予定だった『文化・芸術特集号』の編集を進めていたところから、記事内容を全て差し替えると決めたのが2週間前の木曜の10月1日。総長選考が学内外を問わず大きな話題になったことを受けてでした。総長選考後は、寝る間も惜しんで何時間も議論と推敲(すいこう)に明け暮れました。下書きや公開を見送った原稿も合わせれば、何万文字書いたことか分かりません。
読者の皆さんが東大の今について考える、一助になりましたら幸いです。
最後に、アンケートにご回答くださった皆さま、貴重なご意見ありがとうございました。また、私たちの急な取材のお願いにご協力いただいた教職員の皆さまに厚く御礼申し上げます。
* * *
ここからは、総長選考の取材に関わってきた私の個人的な思いです。
取材で話を聞いた方々はとても真剣に東大の将来を考えられていました。ある取材では「総長選より大事なものがあるか」という言葉を耳にしました。ただでさえ多忙を極める教職員の方々ですが、それほどまで東大の将来を考え、真面目に総長選考と向き合う教職員が多くいたことに驚きを覚えました。
ましてや候補者の方々は、7月に候補者として指名されてから、提出資料を整え、お盆期間に面接を受けています。ご自身の研究などもある中で、東大の未来について真摯に考えを重ねてきたのでしょう。選考会議の委員の方々も、さぞかし真剣に会議に臨まれたのだと想像されます。選考会議の方々に対しては、誹謗中傷も飛び交っています。選考結果への賛否はともかくも、当日は総長が決定するまでに、予定より数時間も長引いて議論を重ねたという事実からもその誠実さが伝わってくるのではないでしょうか(午後1時に始まった会議ですが、ある噂によると日付が変わる頃まで作業は続いていたそうです)。
候補者の皆さんにも選考会議の皆さんにも、その姿勢に対して、私自身敬意を表したいと思います。
候補者、選考会議の委員、教職員の誰もが真摯に向き合ったはずの総長選考でしたが、選考会議から出された説明を巡るすれ違いが、学外をも巻き込んだ大きな「揺動」として表出してしまいました。しかし、総長選考は、このような数日で消費されてしまうような「炎上」として収まって良い話なのでしょうか。私個人としては、東大の未来を話し合う方向へ言説が進まなかったことが、残念でなりませんでした。その点では、不幸な総長選考だったと総括されて良いのかもしれません。何より、憶測が飛び交う中、健全な議論の土台となる十分な情報を届けることができなかった私たちメディアにとってみれば、現状はやはり失敗だったのでしょう。
1年前、私はこのようなことをひっそり思い描いていました。きっと26年の秋に総長が決まる頃には、紙面は「より良いキャンパス像は何か」多様な未来像のアイデアで埋まっているだろう──。私自身、1年後の紙面に向けて、東大のDEIにはどういう在り方があるかな、東大のGXにはどういう在り方があるかな、などと考えられるよう地道に取材を重ねていたのです。実際に候補者の皆さんも、それぞれのお考えを示して下さりましたが、しかし今、結果として出すことになった総長選考の関連記事は、思い描いていたものからは離れつつあります。
新総長が藤垣教授に決まったことの是非について、この場を借りて個人的な意見を述べるつもりはありませんが、この結果が少なくとも驚くべきことであったのは間違いありません。まずは結果を吟味し受け入れた上で、現在の「炎上」ばかりではなく、明日の東大、10年後の大学、25年、50年先の学問へ目を向けていく必要があるのではないかと個人的に感じています。そのためにも、藤垣新総長の就任と東大150周年を迎える次の春までの半年は、藤垣新総長が務める6年間について考えていきたいところです。
これからも東京大学新聞社をよろしくお願いいたします。
(文学部3年・溝口慶)
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