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台湾・洋上風力の離岸距離40㌔へ 住民運動が政府動かす 国内では「2㌔で安全」と日本企業 鶴岡市議らが現地調査 2026

Юстиция Иванова by Юстиция Иванова
септември 9, 2026
in Без категория
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台湾・洋上風力の離岸距離40㌔へ 住民運動が政府動かす 国内では「2㌔で安全」と日本企業 鶴岡市議らが現地調査 2026

(2026年9月2日付掲載)

40キロ沖にできた大彰化洋上風力発電(台湾彰化県)

 山形県鶴岡市の市議会議員・草島進一氏は、4人の調査チームを結成し、今年7月、洋上風力発電500基を達成した台湾を現地視察した。他の3人のメンバーは、横浜市立大学准教授の田鎖順太氏(工学博士)、日本野鳥の会主任研究員の浦達也氏(理学博士)、アジア経済研究所研究員の鄭方婷氏(チェン・ファンティン。法学博士)。台湾では当初、海岸からわずか数㌔のところに何十基もの洋上風車を建てたが、騒音・低周波音の影響や漁業の被害が大きく、漁業者や住民の強力な反対運動が起こった。そのなかで台湾政府が洋上風力の規制を強化し、現在では単機出力1万4000㌔㍗の風車なら海岸から40㌔程度離さなければ建設できない。ところが、台湾の洋上風力事業には多くの日本企業が参入しており、以上の事情を知り抜いているにもかかわらず、彼らは口をつぐみ、秋田・山形・新潟県などの沖合で進める1万5000㌔㍗級の風車を建てる事業では、「離岸距離は2㌔でも安全」といってはばからない。そこで本紙は、調査チームの視察報告をもとに、日本で暮らす者にとっても教訓的な台湾の洋上風力発電をめぐる動きをまとめてみた。

 

大彰化洋上風力を撮影する調査チーム(台湾)

 調査チームは台湾で、台湾政府の経済部(日本の経産省に相当)と環境部(同じく環境省に相当)を訪れて意見交換をおこなうとともに、洋上風力発電反対をたたかってきた雲林県の漁業者たちや、漁業者を支援するNGOのメンバー、彰化県で風力反対をとりくんでいるNGOのメンバーと意見交換をおこなった。

 

 台湾の新聞によると、台湾政府の再エネ推進政策の下、2010年から10年間で台湾北西部の海岸沿いに300基以上の陸上風力発電が稼働するようになった。風車は次第に大型化し、風車の低周波音で不眠、頭痛、めまいといった風車症候群を発症する人が増え、心血管疾患のリスクも高まった。シャドーフリッカーで苦しむ人も増えた。

 

 そのなかで苗栗(ミャオリ)県では、陸上風力反対運動が広がった。もっとも有名なのは2012年から14年にかけておこなわれた元里風力反対運動で、地元住民が低周波音の健康被害や周辺の生態系破壊を訴え、コンクリートミキサー車の通行を頻繁に止めたり、経済部の前で座り込みをおこなったりし、農民や学生の逮捕者まで出した。2年間にわたる反対運動の結果、風車2基の解体と約20基の建設中止が決まった。

 

 こうした経験から、苗栗県の沖合に洋上風力発電計画が持ち上がったとき、住民たちは警戒心を高めた。そして、漁業者や環境保護団体が洋上風力発電を建設するさいのモノパイルの打設音が魚類やイルカに致命的な影響を与えるとしてくり返し抗議行動をおこない、一部の計画の環境影響評価見直しや風車設置場所の変更を勝ちとった。

 

 苗栗県で海岸からきわめて近い場所に計画された洋上風力発電は、フォルモサ1、フォルモサ2などだ。

 

 フォルモサ1は、海岸から2~6㌔の洋上に、単機出力4000㌔㍗の風車を2基と、6000㌔㍗の風車を20基建設したもので、それぞれ2017年4月と2019年12月に商業運転を開始した。これには日本のJERA(東京電力と中部電力が出資する日本最大の発電会社)、商船三井、東邦ガス、北陸電力が出資している。

 

 またフォルモサ2は、海岸から3・8~10㌔の洋上に、8000㌔㍗の風車を47基建設したもので、2019年10月着工、2023年9月に商業運転を開始した。これにもJERAが出資している。

 

 台湾の洋上風力反対運動のなかでもっともセンセーショナルなものの一つは、雲林洋上風力発電に対する漁業者のたたかいである(漁業者へのインタビューは後述)。

 

 2020年、ドイツのWPDは雲林県沖に8000㌔㍗の大型風車を80基建設する計画を打ち出した。だがその海域は、地元の漁師たちによって何世代にもわたって受け継がれてきたボラやマナガツオの好漁場だった。

 

 同年6月、WPDは事前通告なしに作業船を現場に進入させ、操業中だった多数の漁船の網を切断した。また、海底ケーブルを敷設するための工事を始め、多数の魚を死なせた。怒った漁師たちは数十隻の漁船で作業船を取り囲み、作業をできなくさせた。事業者は漁師たちを裁判に訴え、翌年2月1日早朝には警察と検察が一斉摘発をおこなって30人以上の漁師を逮捕した。しかし3年間にわたる法廷闘争の後、漁師たちは無罪を勝ちとった。

 

 こうした漁業者や住民たちの運動が、台湾政府を動かした。台湾政府は、単機出力1万4000㌔㍗の洋上風力発電なら海岸から40㌔程度離さなければならないと決めた。調査チームは、実際に岸から40㌔離れたところに建設されている彰化県沖の大彰化洋上風力発電(1万4000㌔㍗×66基)を見てみようと、モーターボートをチャーターして現場に行ってみたが、到着するまでに約2時間かかったという。

 

 ちなみに彰化県沖の海龍洋上風力発電(1万4000㌔㍗×73基)も岸から45~70㌔離れたところに建っているが、この事業には三井物産が出資している。

 

誰も取り残さぬ環境政策 台湾政府経済部

 

台湾政府の経済部を訪問した調査チーム。右から、浦達也、田鎖順太、草島進一、一人おいて鄭方婷の各氏

 4人の調査チームは台湾政府の経済部を訪問し、意見交換をおこなった。台湾側からは、経済部の課長など4人の職員が出席した。

 

 経済部からは、台湾の洋上風力発電建設は国を挙げてやっている施策であること、当初は建設する場所が海岸に近かったが、住民や漁業者から反対の声があがり、政府が方向転換して法律を見直し、規制に踏み出したと発言があった。

 

 台湾経済部の女性課長は、「戦略的環境アセスメントを2015年から始めた。これは政府がおこなうもので、それをクリアしたら個別の環境アセス(環境部が管轄)に入る。中身として、環境への影響が深刻な“環境敏感区”を設定し、ここには洋上風力を建ててはいけないとした。また、バードストライクを避けるために風車のタービンとタービンの間は500㍍以上あけなければならないとした。毎年11月から3月にかけては渡り鳥が台湾に渡ってくる時期なので、この時期には洋上風力を建設してはならないとした。また運転開始後も、生態系の監視や漁業の復興が義務づけられている」とのべ、次の点を強調した。

 

 「大きな環境政策を進めるには、1対1の“ウィンウィンの関係”としてだけでなく、“エブリワン・ウィン”を原則として進めている。できるかぎり誰もとり残さないという意味だ。人間、漁業、鳥、イルカなど、すべてが共存共栄の関係になるよう考えている。そうでないと長続きはしない」

 

 調査チームが「1万4000㌔㍗の風車を建てるには海岸から40㌔離さないといけないと聞いたが、その根拠はなにか?」と問うと、「2021年にできた海洋空間計画が根拠だ。フォルモサ2の事業が始まった後に見直した」との答えが返ってきた。

 

 経済部の説明によると、海洋空間計画は戦略的環境アセスメントを発展させたもので、「環境敏感区」に加えて、漁業区域、台湾のシロイルカ(西部沿岸に生息する絶滅危惧種)の生息区域、鳥類の保護、中国・台湾間の水路、公の航路、軍事上の制限区域などを含めてゾーニングし、そこを風車を建てることができない海域とした。そして、残りの建てられる海域のうち、水深が比較的浅いところということで「40㌔沖」となったという。

 

 続いて台湾経済部から、次のような説明があった。

 

 「環境保護団体からの声もあり、環境部から要望が上がって、環境敏感区をつくることになった。たたき台になる案をつくったのは経済部だが、海洋委員会や農業委員会(農業部)が生態系の調査にもとづいて上げてくる意見なども参考にし、修正して決定した。決定するさい、政府内だけでなく、一般住民や環境保護団体も参加する説明会(100人以下)を公開でおこない、みんなから意見をあげてもらって、相互交流の中で決めていった」

 

 「海洋空間計画を決めるうえで、ドイツの例を参考にした(ドイツの海洋空間計画は、洋上風力を海岸から30㌔離さねばならないと決めている)。もちろんデンマーク、イギリス、オランダの経験も参考にしている。ヨーロッパの国々は洋上風力を台湾より先に開発してきたので、われわれにとって学習の対象だ。規制する法律も参考にしている」

 

 「台湾は人口密度の高いところなので、なにも考えずに風車をつくってしまったら、住民からのものすごい非難や抗議デモが起こることが予想できる。台湾は民主的な国なので。政府としても献身的に気をつけてやらないと、ものすごいバッシングを受ける」

 

企業に厳しいアセス法 台湾政府環境部

 

 次に調査チームは環境部を訪問し、意見交換をおこなった。台湾側からは、環境部の政務次長(日本の環境副大臣に相当)ら9人が出席した。

 

 台湾の環境部は、環境影響評価(環境アセスメント)の仕組みも住民の声を入れて実効性のあるものに変えたと報告した。意見交換を通じて、日本の環境アセスと大きな差があることが浮き彫りになった。

 

 台湾側から、台湾の環境影響評価(EIA)の特徴について説明があった。

 

 まず、ダブル主管機関。事業者が開発許可を申請すると、所管の行政機関(エネルギーなら経済部)がこれを受理するが、次に事業者は環境影響説明書を環境部に提出し、環境部の審査をパスしなければならない。もし環境部が不許可にしたら、経済部は許可を出してはならないと法律で決まっている。この点が日本との大きな違いで、日本では発電事業の許認可権は経産省が握っており、環境省は環境アセスに意見をのべることしかできない。

 

 次に、情報公開と住民参加。環境部は環境アセス審査会議の開催を通知する。環境影響説明書の閲覧は自由にでき、審査会議はライブ中継され、一般市民がその場で発言したり質疑応答に加わることができる。事前に申し込めば、自宅から電話での参加も可能だという。

 

 環境部の職員は「これまでブラックボックスと批判されてきたので、今はすべてオープンにしている」とのべた。一方、日本では事業者が著作権を盾に環境影響評価書のコピーやダウンロードを禁止する場合があるし、審査会議で住民が意見をのべることはできない。

 

 三番目に、開発事業者への監督の強化と違反者への罰則。事業者は環境影響説明書を厳格に実行しなければならず、違反者には30万~150万元(150万~750万円)の罰金が科される。最終的には工事停止まで命令することができる。一方、日本では環境アセスは事業者がやり、罰則もない。

 

 最後に、否決権。環境影響説明書の審査が終了する前に、行政機関は開発許可を出してはならない。これに違反してなされた許可は無効となる。また、事業者がこれを無視して独断で着工した場合、30万~150万元の過料が科される。行政機関は開発行為の停止を命ずることができる。これに従わないとき、責任者を3年以下の懲役に処し、30万元以下の罰金を併科できる。

 

 台湾側から、「台湾の環境影響評価法は、環境部による事後の追跡・監督メカニズムを明確に規定しているが、日本の環境影響評価法は事後監督の強制がなく、事業者の自主性に委ねている」との指摘もあった。

 

補償金いらぬ海を返せ 雲林県の漁業者たち

 

「説明もせず工事を始めた」と語る雲林県の漁業者

 冒頭に触れたように、台湾の雲林県では漁業者たちの大規模な洋上風力反対運動が起こっていた。調査チームは現地で漁業者たちに集まってもらい、意見交換した。

 

 雲林県沖には、ドイツのWPDが、海岸から8~17㌔のところに単機出力8000㌔㍗の風車を80基建設し、昨年1月に商業運転を開始している。そして、この事業にも日本の総合商社・双日、ENEOS、中国電力、四国電力などが出資している。

 

 雲林県は、養殖業をはじめ水産業で有名なところ。集まってもらった漁業者たちが暮らす町では、漁船が300~400隻あり、人口の8割は漁師、残りの2割は牡蠣(かき)などの養殖に携わっている。漁業で生計を立てている町だ。冬には脂ののったボラが大量にとれるという。

 

 二人の漁業者は、次のように語った。

 

 「洋上風力が80基建っている海域は、ここでは一番重要な漁場だ。建設前から反対運動が起こっていた。最初に問題になったのが、事業者がわれわれに建設する場所を知らせなかったことだ。漁協は情報を得ていたが、個々の漁民は具体的にどこでどのように風車を建設するかはわからなかった。説明会すらなかった。建設が始まってからそれがわかり、みんなとても腹を立てて、デモをするための組織をつくり、抗議の海上デモをした。風車を建てる作業船がやってきて、これに対して海上デモをした。風車が建てられると、年収がメチャクチャに減るからだ」

 

 「わしらは3年間ぐらい抗議を続けた。作業船が来ると、みんなが漁船を出して作業ができないようにした。作業船に多くの漁船の網が巻き込まれ、それについては賠償金をもらったが、しかし事業者は工事を妨害したといってわれわれを裁判に訴えた。最高法院(最高裁判所)に上告し、つい最近判決が出て、漁師は無罪となった。漁民の権利を守るために奮闘する弁護士さんたちには感謝している」

 

 「洋上風力の工事のさい、巨大なモノパイル(鋼管杭)を海底の地盤に深く打ち込み、風車の基礎をつくるが、そのモノパイルを打設する音がひどい。とくにその騒音は夜にひどく、年寄りはみんな眠れず、抗議の電話をする者もいた。建設期間の1~2年の間、騒音に苦しめられた。事業者と交渉して“夜は工事を止めてくれ”と申し入れたが、事業者は“工事は始まったら止められない”といった」

 

 「山形県で2㌔沖に洋上風力を建てるというが、とんでもないことだ。騒音問題は恐ろしい。8㌔沖に風車を建てるさいの打設音が、海岸から20㌔ほど山側に入ったところでも、小学校の授業ができないぐらいの影響を与えた」

 

 「(工事が終わって風車が稼働し始めた後)わしらはこれまで魚を獲っていた漁場を失った。今は風車の周囲には入ることはできない。網を入れることができないのだ。今は元の漁場を迂回して遠くまで行かなければならない。燃料代の負担も大きい。今は雲林から北はすべて洋上風力が立ち並び、操業できる場所は限られてしまった」

 

 「初め1隻につき10万元(約50万円)という補償金を提示されたが、わしらはのまなかった。補償金なんて一切いらない。ここに風車を建てるな、漁場を返してくれ、といいたい。ここはとてもいい漁場で、1年中魚が獲れるし、今の季節は高価な魚が何万元と獲れる。補償金なんてかわいいものだ。補償金はいらない」

 

 「その後、経済部副大臣がわざわざやってきて、わしらと交渉した。事業者は上から目線で、平気でウソをつき、勝手に工事を始めた。副大臣が来た後、新しいルールや補償のしくみができた。わしら漁師はガッツがある。誠意を持って信頼関係を築こうとしない者は許さない」

 

風車は養殖にも打撃 漁業者支援するNGO

 

 次に調査チームは、洋上風力発電が漁業に与える影響について調査し、漁業者が環境アセスや訴訟手続きに参加できるよう支援するNGO「漁民権益暨環境永續中心」を訪れ、メンバーたちと意見交換した。

 

 NGOの理事長は、洋上風力発電についてこう語った。

 

 「そもそも台湾では、岸から3海里(5・5㌔)の範囲には風車を建ててはいけない。そこは生態系が濃い場所なので。政府の戦略的環境アセスメントで決まっている」

 

 「洋上風力発電の影響として、養殖牡蠣への被害が大きかった。風車のタービンが動き始めると、振動で砂が舞い上がり、牡蠣は呼吸ができなくなってたくさんの砂を食べてしまい、それが牡蠣の大量死につながった。しかし、事業者はその事実を認めようとしない」

 

 「洋上風力発電から陸上の変電所までを結ぶ海底ケーブルの問題もある。海底ケーブルがそこの生態系を破壊している」

 

 「洋上風力発電が建っている場所は、タンカーの係留場所の近くだ。これまでもタンカーの事故があったが、もし台風が来てタンカーが風車とぶつかる事故が起き、油が流れ出すと、生態系に大きな影響を与える危険性がある」

 

 「80基の風車が回っている近くに入ってしまったら、ある条件のもとで、人間として生きていけないぐらいのつらさ、耳鳴りなどを感じた。だからこそ政府に求めているのは、民家の近くにつくるなということだ」

 

 「建設後の管理についてだが、海底ケーブルが切れるとそのまま放置されているものがある。風車が故障しても、費用や技術の問題があって、撤去されずにそのまま残っているものもある。漁業者たちは、20年経って商業運転期間が終了すれば風車を撤去してほしいと要望しているが、とりあわれない。そのまま放置すれば“海の墓場”になってしまう。これがクリーンエネルギーなのか?」

 

緩慢な日本の安全基準 事業者やりたい放題

 

 今回の台湾現地視察を経て草島氏は、「日本のJERAや三井物産は台湾の洋上風力発電事業に参入し、以上のような事情を知り抜いているのに、日本国内では離岸距離2㌔のところに洋上風力発電を建てようとし、説明会で“沿岸住民への影響はまったく問題ありません”と平然といっている。そのことに強い衝撃を受け、疑念を持った」とのべている。

 

 実際に、国の促進区域に指定された秋田県の男鹿市・潟上市・秋田市沖洋上風力発電(1万5000㌔㍗×20基)は、岸から1・3㌔沖に建てる計画だが、事業者にはJERAが入っている。新潟県の村上市・胎内市沖洋上風力発電(1万5000㌔㍗×38基)も、岸から2㌔沖に建てる計画だが、事業者には三井物産が入っている。

 

 草島氏は8月7、8日に開かれた山形県遊佐町沖洋上風力発電事業の環境影響評価・準備書説明会に参加した。

 

 遊佐町沖洋上風力の計画は、台湾では離岸距離40㌔が義務づけられている巨大風車を上回る単機出力1万5000㌔㍗の風車を、岸からわずか2㌔のところに30基建てるもの【地図参照】。事業者は、丸紅を中心とするコンソーシアムだ。基礎はモノパイル式で、直径10㍍の鋼管を地下50㍍に至るまで打ち込む。この打設音がうるさくて眠れないと、台湾で大きな問題になった。

 

 説明会では事業者が、モノパイル打設音の予測値を示した。それは9地点で52~62デシベルであり、「おおむね環境基準以下なので、まったく問題ありません」と説明した。

 

 疑問を持った草島氏が準備書を詳しく見てみると、「モノパイル打設ハンマーは4000KJ級油圧ハンマーを使い、1日4時間・約3500~6800回打設する」「気中音(空気中の音)のピークは148・5デシベル。水中音のピークは247・5デシベル」とあった。

 

 気中音148・5デシベルとは、離陸直後のジェットエンジンの真横で感じる音で、保護具がなければ一瞬で鼓膜が破れるレベル。水中音247・5デシベルとは、魚類や海棲哺乳類が至近距離で浴びると、聴覚器官の完全な破壊や内蔵破裂などの致命的損傷を受けるレベルだ。

 

 なぜこれが問題にならないかというと、日本の環境影響評価法では、時間平均である等価騒音レベルによる評価が採用されているからだ。どういうことかというと、4時間の作業時間のうち95%は「ハンマーを引き上げている無音・微音の時間」だが、等価騒音レベルはこの「95%の無音時間」も含めて平均の数値をとるため、実際にはすさまじい衝撃音が「とても静かな連続音」に変わってしまう【グラフ参照】。

 

 さらに日本の環境影響評価では、A特性を適用することで、低周波音が切り捨てられている。現在、ハンマーの巨大化にともなって打設音の卓越周波数が低周波数帯域へシフトしていることが指摘されている。低周波音は長距離を減衰せずに伝わるため、夜間の沿岸部における睡眠障害など健康被害を引き起こす可能性が大きいが、これが見えなくされている。

 

 一方、台湾を含む国際社会の環境影響評価では、ピーク音圧レベル規制と累積曝露レベル規制を併用した厳格な絶対値規制をもうけている。また、低周波音領域ではC特性・Z特性の適用や3分の1オクターブバンド分析を義務づけ、低周波音による睡眠障害などの健康被害を防ごうとしている。

 

 もし日本企業が台湾で、遊佐沖でやったような等価騒音レベルの分析結果を提出したら、台湾の環境部は即座に「沿岸の民家、学校、病院等に対する影響評価として不十分である」と判断し、開発を停止させ、データの再計算と追加提出を義務づける。事業者がこれを提出できない場合は、より厳格で数年単位の時間を要する第二段階環境影響評価に強制的に移行するか、最悪の場合、開発自体が却下される――と草島氏は指摘している。

 

 草島氏は以上のことを踏まえ、経産大臣と環境大臣に対し、①欧州や台湾がおこなっているピーク音圧と累積曝露レベルを併用した厳格な絶対値規制を法制化すべきである、②洋上風力の離岸距離2㌔では、いかなる対策を講じても国際的な安全基準を満たせない。安全性が担保できない事業に対しては、計画の白紙撤回を指導すべきである、などとした意見書や公開質問状を提出した。

台湾・洋上風力の離岸距離40㌔へ 住民運動が政府動かす 国内では「2㌔で安全」と日本企業 鶴岡市議らが現地調査 2026

IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2026 2026-09-09 12:29:52

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