東大に合格したあなたは今、どんな未来を思い描いているだろうか。「東大生」としての生活に胸を膨らませる一方で、激動の時代を生きていくことに漠然とした不安を抱く人もいるかもしれない。
今回話を聞いたのは、東大社会科学研究所所長の宇野重規教授。学生時代の迷いや日米学生会議での衝撃を経て、たどり着いた哲学とは。後編では、研究内容の魅力や新入生に向けたメッセージに迫る。正解のない問いに耐え、民主主義社会の当事者として歩み出す新入生に贈る、思考の指針。(取材・木下太陽、撮影・宇城謙人)
【前編はこちら】
前編では、宇野重規教授の学生時代に迫りました。
トクヴィルの批判精神に学問への姿勢を見出す
──トクヴィルの魅力について教えてください
元々貴族のトクヴィルですが、デモクラシーこそが人類の未来だと確信するようになります。とはいえ、もろ手を挙げて褒めるわけではありません。平等社会には平等社会なりの問題があるのです。例えば、封建社会においては権威ある人の意見が尊重されましたが、デモクラシー社会では、一人一人が自分の頭で考えるようになります。それ自体は良いことですが、全てを自分で選び、責任を持つことはしんどいことです。しかもその選択の基準は明確でない。結果として、人々は周囲がどう思っているかばかりを気にするようになります。トクヴィルは伝統的な社会が解体すると人々は個人主義化し、自分の世界に閉じこもるようになると予言しました。そのような個人は自分の狭い世界の外で世の中はどうなっているのか、人々は何を考えているのか、気になって仕方ないのです。人々は知らず知らずに多数に同調するようになり、これをトクヴィルは多数の暴政と呼びました。これは考えてみれば皮肉な事態ですよね。自分の頭で考えようとすればするほど、世の中の多数意見やトレンドに従ってしまうのですから。このようなデモクラシー社会の逆説を語るとき、トクヴィルはさえていると思います。現代社会にもあてはまる洞察ではないでしょうか。
封建社会が解体しても、人々は自動的に自治をできるようになるわけではありません。日頃から隣人と協力する訓練をしていない民主的社会の個人は、むしろ中央政府に頼るようになります。本当に身近な問題の解決も、自分では何もできず、政府頼みになります。
『アメリカのデモクラシー』を読めば読むほど、デモクラシーは本当に大丈夫だろうかと思うようになります。デモクラシーは決して全面的に素晴らしいものではなく、危うい面もありますが、その危うさをどう乗り越えていくかが課題だとトクヴィルは言います。私はそこに、トクヴィルの批判精神を見出しますね。
──批判精神において重要なことは何でしょうか
批判精神とは本来、すべて自分の頭で考える重荷に耐えることです。それは本当につらいことです。だからどこかに分かりやすい正解があると考えたり、AIに答えを求めたりすることもあるでしょう。とはいえ、世の中で重要な問いほど、必ずしも明快な正解がありません。そう考えると、正解のなさ、あるいは正解の見えにくさに耐えられることが重要じゃないでしょうか。
優秀な東大生なら、少しでも早くきちんとした正解を見つけたいと思うでしょう。もちろんそれで構いません。そのために、まずは一つの方法論に従って学ぶことは、大学においてとても大切なことです。すべてをゼロから考えると、なかなか前に進めません。まず一つ何かの型を身につけて、それを使いこなすことが必要です。しかし少し学問が進むと、今度はその型に疑問を抱くことがあります。これは間違っているんじゃないか、限界があるんじゃないかと思う瞬間があるんですね。でもその疑問は、学生として、研究者として、一人の人間として、ものすごいチャンスだと思っています。まずは一つの専門を学んでみる、その上で、その専門の世界が揺らぎ始めて、さらに巨大な学びへの誘いを得る。このことは大きなチャンスだとぜひ思ってほしいですね。私はあちこちに出かけて、半ば直感で試行錯誤しましたが、何かを学び、そこから先、迷いの瞬間が来たときにどれだけ飛べるかが大切だと思いますね。
民主主義を守る─迷って、参加して、責任を持って
──これから民主主義社会で「参加と責任のシステム」の一翼を担っていく新入生にメッセージをお願いします
民主主義の定義は一つに確定するのが難しく、基本的には公正な選挙の有無を重視します。ただ私は『民主主義とは何か』という本で、古代ギリシャを例に、「参加と責任のシステム」というふうに定義しています。これは何かというと、参加するからこそ責任を取るということです。自分の知らないところで大切なことが決まるのは嫌ですよね。自分も参加して決めたことだからこそ、仮にその結論に賛成でないとしても責任を感じられる。全てを他人事にするのではなく、当事者として何事かに参加して一定の責任を持つことが、人間にとって大切だと思います。
今の民主主義はなぜ機能しないかというと、その参加と責任の間に距離が遠すぎるからです。あるいはそもそも参加の実感があまりに乏しいからです。数年に1回の選挙に投票しただけで社会に参加したという気持ちになれるかというと、やはりなれないでしょう。けれども、この地球上の一角に自分が関わっている場所、そこでの決定に関しては責任を持ちたいと思える場所があるとことは、実は幸福なことではないでしょうか。それは人間の生きがいにもつながると思います。ですから、世界でも日本でも良いですが、逆にもっと小さくて、所属する組織や地域とか、自分が作ったスタートアップ企業でも結構ですけれど、本気で何かに参加してそこで自分が主体的に責任を取れるような場所を、少しでも増やしていくことが重要ではないでしょうか。
皆さんはこれから勉強をして、いろいろな経験をして、自分が何に主体的に参加するかを決めるわけですが、もちろん簡単なことではありません。それは別に今、この空間じゃなくても構いません。過去からのつながりや伝統でも良いし、あるいは自然や環境とかでも良いです。例えば、この地域の環境汚染に対してどうしても自分は立ち上がりたいと思うこともあるでしょう。自分はこれにコミットしたいという、決して他人事ではないと思える何かを、ぜひ見つけてほしいですね。急がなくて良いんです。あまりそう簡単に見つからないし、むしろその方が人生は面白いです。それでも、そういうものをじっくり探してほしいと思います。
その上で、皆さんにはぜひ民主主義を守っていってほしいと言いたい。民主主義は、決して学校で学んだだけのものではないし、戦後米国に押し付けられたものでもありません。私たちの民主主義は、自分たちで選んだものだと思っています。民主主義をあれだけ振り回していた米国が民主主義を語らなくなってしまった時代に私たちは生きています。だからこそチャンスじゃないですかね。こんな時代だからこそ、責任を持って民主主義を大切にしていくことが大切なんだということを、ぜひ新入生の皆さんにお伝えしたいと思います。

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宇野重規教授インタビュー【後編】 新入生よ 大学では大いに迷い、行動し、学ぼう 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-04-15 13:00:10
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