3月16日、東大本郷キャンパスにてFS(フィールドスタディ型政策協働プログラム)活動報告会が開催された。1年間、日本中の各地域で活動した学生たちが一堂に会し、26チーム96人が活動概要や課題に対する提案などについて発表した。 (取材・撮影 吉野祥生)
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FSは東大が学内生向けに実施する課外活動プログラム。学生たちが3〜5名程度のチームで決められた地方自治体を年3回程度訪問しつつ、提示された課題解決に現地の自治体担当者とともに1年間取り組む。2017年から始まり今年で10年目を迎えた。提示される課題は各自治体の状況やニーズにより異なっており、その地域ならではの課題に取り組むことが大きな特徴だ。普段出会う機会が少ない、異なる専門・学年の学生たちが解決策の提案を目指す。
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活動報告会の冒頭では、藤井輝夫総長からあいさつが行われた。藤井総長は学生の受け入れに協力した自治体の担当者などに謝意を示しつつ、「(FSを通して)相手を尊重し対話を重ねていく中で、新しい未来を構想し創造していく力を生むことにつながる学びを得たのだと思います。この経験や学びは、目まぐるしく状況が変わり世界規模の問題が山積する現代社会において、進路に関わらず貴重な財産となるでしょう」と述べた。
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さらに、昨年10月のホームカミングデイでFS参加者有志がFSマルシェを出展したことや、今回の活動報告会のポスターセッションに株式会社三井住友フィナンシャルグループが協賛したことに触れ、「FSを通じて地域社会と東大の輪が広がるだけでなく、卒業生とのつながりや企業とのつながり、そして学生同士のつながりが広がっていくことは大変喜ばしい」とFSの持つ多様な役割について言及した。
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続いて、体験型活動ワーキンググループ座長(当時)を務めていた玄田有史教授(東大社会科学研究所)からあいさつが行われた。玄田教授は、人口減少が日本の各地で重要な問題となっているとしつつ、「人が減っても、すぐに地域が衰退するわけではないけれども、地域から小ネタが消えていくと、あっという間に地域は衰退していく」と自身の提唱するKNT(小ネタ)理論を交えて語った。そして、「今日の報告会では、学生の皆さんが地元の方と発見した多くの小ネタの芽が発見され、見出され、そして育まれていく。そんなKNTの素晴らしい1日になるんじゃないかと楽しみにしています」と発表に期待を示した。
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続いて各チームからの発表が行われた。26チームの課題へのアプローチ方法はさまざまで、例えば東京都新島村チームは、地域の資源をカード化して振興につなげるプラットフォームを提案。7ジャンル84枚の地域資源カードは、現地住民主体のワークショップで活用されたという。また、鳥取県北栄町は、名所を生かした観光施策に取り組んだ。北栄町は漫画「名探偵コナン」の作者である青山剛昌氏の出身地であり、全国からファンなどが訪れる「青山剛昌ふるさと館」を軸に観光のモデルルートを考案した。長崎県五島市チームは住民との対話を通じたコミュニティー活性化を行い、人口減少地域における今後の祭りのあり方などについて議論した。ここではすべて紹介しきれないが、各チームが担当地域の特色が色濃く現れる発表を行った。
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各地域からの発表が終わると、津田敦理事・副学長より講評が行われた。今回の発表については、「本当に社会実装を目指して具体的にやれることを提案できるようなレベルにだんだんなってきた」と述べ、学生たちをたたえた。
さらに、体験活動は「本当に東大生が宝に見えるプログラム」であると東大生の持つポテンシャルについて力説し、東大の厳しい財政状況にも触れながら、「体験活動の重要性を総長とも共有できており今後も維持していきたい」と展望を述べた。また、今回からスタートした「協賛」のシステムについても、協賛する企業が今後も増えていけばより持続的に東大生の体験活動を支えられるとした。大学のプログラムとしてさらに大きくなれるよう、みんなで力を合わせていきたいと締めくくった。

発表会終了後はポスターセッションが行われ、学生や自治体担当者らがチームの垣根を越えて自由にポスターの前で歓談する姿が見られた。今年からは協賛により茶話会と題して軽食や飲み物が振る舞われ、昨年よりもより活発な交流が生まれる場となった。
最後には協賛企業の三井住友フィナンシャルグループから優秀なチームに「SMBC賞」が贈呈され、東京都新島村チームが選ばれた。受賞理由について、三井住友フィナンシャルグループの担当者は「地域資源カードの製作は地域を問わずできる取り組み。このプラットフォームが展開し地域振興につながれば銀行も何らかの形で関われるほど社会に近い」と述べチームをたたえた。こうして盛況なうちに報告会は終了となった。(新島村チームに行ったインタビュー記事は記事末尾に掲載)

記者の目
報告会で記者が印象に残ったのは、どのチームも自分たちが取り組んできた試みに対して自信を持ち、その地域に愛着を持っていることだ。東大生は地域にとっては「よそ者」でありつつも、その地域をよく知って課題に真剣に取り組むことを通じて、地域の魅力に気づき、役に立ちたいという思いは強く感じられた。まさに日本には魅力的な地域があふれていることを実感させてくれる発表だった。
もちろん、地方には課題が山積しており、学生の力では抗えないような問題が多々あることは事実だ。しかし、「人口減少」や「過疎化」といった教科書で一言で片付けられてしまう問題の構造的な要因を活動を通して実感することは価値ある経験だ。課題解決にはこうした問題の原因を把握することが不可欠で、プログラムを通して東大生はこれからのAI時代に求められる洞察力や思考力を他者と協働しながら身に付けた。
東大生の過半数が首都圏出身と言われる中で、都市部にとどまらず地方の実態を肌で理解することは極めて有意義だ。現地で学んだ実情は、今後の人生において複雑な社会を高い解像度で見つめ直すための、大きな糧になるだろう。
日本の地方部を取り巻く環境が、今後ますます厳しくなることに鑑みると、東大の果たすべき社会的役割は増すばかりだ。FSは、1年間で学生が地域課題を解決できるかどうかというAll or Nothingのコンペではない。むしろ学生がここで学んだ知識や力を、これからの人生において研究や仕事で生かすことでようやく成果が現れる。東大にとっても、全国の自治体と専門知の集合体である大学を結んでいく息の長い取り組みだ。その成果はすぐには可視化できない部分も多いが、大学教育におけるロールモデル的な取り組みであることは間違いない。学生たちの今後の活躍とこのプログラムのさらなる発展に大きく期待したい。
インタビュー編へつづく
SMBC賞を受賞した東京都新島村チームと、長崎県五島市チームへインタビューを行いました。
インタビュー編はこちらからご覧いただけます→ https://www.todaishimbun.org/fsinterview_20260917/
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【イベントレポート】2025年度FS活動報告会 地域課題に挑んだ東大生が成果発表 2026
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