市野川容孝教授(東大大学院総合文化研究科)ら教職員69名は4月30日、学費値上げに反対する学生が安田講堂に侵入した事案に関する停学処分を再審査するよう、藤井輝夫総長に対し要請文を提出した。
要請に参加したのは現職教員46名、現職職員4名、名誉教授ら退職教員19名の合計69人。(顕名での回答者一覧は記事末尾に記載)
要請文では、①処分に先立つ事情聴取が、処分の根拠を学生に明示しないまま行われた点、②懲戒処分案を評決する「参考人団」が1時間に満たない審議しかしておらず公平かつ透明な裁判を果たせていない点、③過去の同様の事例と処分が一貫していない点──を問題として指摘。懲戒処分の再審査の実施を求めた。
東大は、授業料値上げをめぐる「総長対話」が実施された24年6月21日の夜に、学生4人が安田講堂に数分間侵入し、制止を試みた警備員を負傷させたとされる事案をめぐり、一部学生を停学処分としたとみられる。東大は、東京大学新聞社の取材に対し、学生懲戒に関して、取材に応じない方針だとしている。
処分を受けた学生の一人は、処分の取り消しを求め東大を提訴している。処分に先んじた東大側の調査書では①安田講堂への侵入が警備員などの生命身体に危険を招いた点、②講堂に他の学生を招き入れようとしたのは、さらなる衝突を生み、警備員などの安全をさらに脅かしていたかもしれない点──が問題として指摘されていた。
過去の決定はどこまで参照されたのか
要請では、当該学生が安田講堂へ侵入したのは5分に満たない短時間であり、しかも当該学生と警備員の接触はほとんどなかったにも関わらず、停学処分が下されるのは不適切だとした。1989年に昭和天皇の葬儀に際して弔旗掲揚に抵抗した学生と職員が揉み合い、怪我人がでた例や、91年から2002年にかけての駒場寮廃寮問題で、講義のために行われた教養学部長室などにおける居座りなどの例のいずれでも学生への懲戒は行われなかったことを指摘。処分に一貫性がないとした。
特に、実際にほとんど接触があったわけではなく、危険を招く「おそれがあった」と推測に依拠した処分は、1941年に改正された治安維持法に類似する危険な考えだとした。
目立つ匿名 2年前の署名では匿名ゼロ人
今回の署名では69人の賛同者のうち、45人が匿名を希望。特に現職の教職員の8割以上が匿名だった。24年に教養学部学生自治会の「授業料値上げに反対する学生決議(駒場決議)」に対し、168人の教職員が賛同を表明した際には、匿名での賛同者は一人もいなかった。
顕名で賛同した教員24人
・市野川容孝教授(総合文化研究科)
・隠岐さや香教授(教育学研究科)
・鈴木泉教授(人文社会系研究科)
・本田由紀教授(教育学研究科)
・加藤陽子元教授
・上野千鶴子名誉教授
・小野塚知二名誉教授
・小玉重夫名誉教授
・影浦峡教授(教育学研究科)
・大沢真理名誉教授
・堀尾輝久名誉教授
・小森田秋夫名誉教授
・田中純名誉教授
・保立道久名誉教授
・品田悦一名誉教授
・塩川伸明名誉教授
・河合祥一郎元教授
・瀬地山角教授(総合文化研究科)
・川本隆史名誉教授
・原田純孝名誉教授
・高橋哲哉名誉教授
・佐々木彈教授(社会科学研究所)
・高橋宗五名誉教授
・小森陽一名誉教授
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