(2026年10月14日付掲載)

北九州市立ひびきの小学校(左)の校舎真横で進むデータセンターの用地造成工事(13日、北九州市若松区)
米不動産投資・開発会社「アジア・パシフィック・ランド(APL)」グループが北九州市立ひびきの小学校(若松区、児童数約1300人)真横で工事に着手している大規模データセンター(総受電容量=120㍋㍗)建設計画をめぐって9日、北九州市が学術研究都市会議場で住民説明会を開いた。説明会には近隣住民中心に約150人(一般住民126人、議員13人、メディア13社)が参加。子どもとともに家族総出で訪れた住民も多く「なぜ小学校真横なのか」「なぜ子どもたちの安全が確保されていないのに工事をすすめるのか」と切実な思いをぶつけた。住民説明会は午後7時から9時までの予定だったが、挙手が途絶えず30分以上延長することになった。
1300人が通う大規模校に隣接

北九州市が実施した住民説明会の会場(9日)
データセンター建設に関する住民説明会は市内全域でも関心が高く、若松区外からも参加を要望する声が多数あった。だが市当局はガラス張りの建物の内側を幕で覆って外から遮断し、受付で来場者をチェック。第40区自治会エリア在住の人とひびきの小学校保護者以外は排除した。さらに市は「会場内で報道機関の取材や撮影がおこなわれる可能性がある」と告知していたにもかかわらず「住民から写りたくないという声があった」といって、会場内の写真・動画撮影をすべて禁止し報道規制を強化。そのため「何かやましいことでもあるのか?」「なぜこんなに閉鎖的なのか?」とヒソヒソ話されるなかで説明会は始まった。
住民説明会は冒頭、北九州市が「ひびきの地区の安全安心なデータセンターに向けて」と題して説明。「説明会の趣旨」について「データセンター計画について経緯や考え方、具体的な計画内容、工事にかかる対策等について客観的な事実に基づき説明し、ご意見やご懸念をうかがう場だ」とのべた。加えて「事業者・北九州市の関係」にふれ「土地は売却済みであり、市は事業者に安全対策の依頼はできるが、工事中止の権限はない」と強調した。
さらに都市部に立地する事例として大阪市内にあるデータセンターの画像や、追手門学院中・高等学校(大阪府茨木市)に隣接するNTT大阪第7データセンターの画像を紹介。ひびきの小学校横がデータセンター建設地に選ばれた理由については「大容量の電力や通信が確保でき、地盤が頑丈で災害リスクが少ないからだ」と説明した。そのうえでデータセンター建設事業者によるシミュレーションを示し、「騒音は夜間の騒音規制値を下回る」「排熱については地上付近の気温はほとんど変わらない」「日影の影響については法定の規制値をクリアしている」と主張し、「影響はほとんどない」と強調した。
ついで日本データセンター協会の江崎浩副理事長がオンライン参加で登場し、最先端のデータセンターはさまざまな弊害が出た米国のデータセンターとは異なっており、データセンターを作れば税収が増えると主張。加えて「データセンターは自家発電を持っているので災害時に電気、通信、熱、場所を提供できる」と説明した。
その後、住民による質問に移ったが、市は何度も「質問は一人一つ」「多くの人に発言してもらうため質問は簡潔に」と強調。市側の回答時間はまったく規制しない一方で、切実な思いをのべる住民の発言時間だけは執拗に規制した。
切実な思いをぶつける 住民の挙手途絶えず

最初にマイクを握ったひびきの地区に住む女性は「この説明会はどういう意図で開催したのか。今日は建設ありきで話されているが、私は建設してほしくない。それに大阪で学校の横にデータセンターがあると出ていたが、この学校は公立ではないし、問題はないというが学校に聞いたのか、生徒に聞いたのか、どういうデータをとって問題はないと結論づけたのか知りたい」と発言。市側は「質問は一つにしてほしい」とのべ、説明会開催の意図について「市として説明するために開催した」と返答した。
続いてひびきの小学校に子どもが通う男性が質問し、「令和五年10月に売却が完了し、令和5年10月に自治会組長会で説明という経緯をみても売却ありきと感じる」と指摘。「市に工事中止の権限はないというが、建設許可を出さなければ工事はできないのではないか。都市部の事例が出ていたが、ひびきのは都市部ではない。むしろこんな田舎にデータセンターを作った事例を教えてほしい。また騒音、排熱、日影のシミュレーションはみな事業者が勝手に作ったシミュレーションなので、反対側のシミュレーションも企画しないといけないと思う。そこで質問だが、このデータセンターを中止にする、設立しないための条件を教えてほしい」とのべた。すると市は「建設しない条件は事業者の判断しかない。私どもは皆さんの不安をうかがい、それを解消することに全力をあげたい」と回答。だが会場から「答えになっていない!」と声があがり、市は「工事を止める方法は思いつかない」と釈明した。
「東京の多摩で起きたようなデータセンターの爆発事故が小学校の横で起きたら、子どもたちはどこに逃げたらいいのか」と切り出した女性は、「多摩の事故では一酸化炭素中毒で人が亡くなっている。市は“何がご不満なのか”というが、工事中に爆発事故が起きる可能性もあるし、低周波で頭痛や発達障害の症状がひどくなることも聞いている。心配なのは子どもたちのことだけだ。どこに避難させるのかだけ答えてほしい」と声を詰まらせながら訴えた。しかし市は「子どもたちを心配されるのは当たり前で、それは私どもも同じ。安全対策はしっかりやる」といいながら「どこに避難させるかは事業者も計画を立てているところだろうと考えている。時期が来ればきちんと説明したい」という返答だった。
そのため会場から「子どもたちの安全が確保されないまま建設を進めるのか!」と声があがり、市は「そんなことはない。市がしっかり事業者に確認するので安心してほしい」と慌てて弁明した。会場では最後まで質問や発言を求める挙手が絶えず、言葉を詰まらせながら発言する母親がいれば「頑張れー」と声援が飛び、住民が一つ質問をするたびに共感を示す大きな拍手が起きた。
塩谷地区から参加した男性は、ひびきの地区で計画されているデータセンターが2008年に八幡で稼働したデータセンターの2倍の規模であることにふれ、「小学校横に巨大データセンターがくることに対して用地売却の前に市役所内部で教育委員会等と協議しなかったのか疑問がある。3年前の9月に北九州市が市有地をデータセンター用地として売却する議案を出し、情報がオープンになったが、市は住民に説明会もせず、翌月の10月に用地売却の議案を可決した。これはあまりにも早すぎる展開だ。市有地は市民の財産であり、児童が通う小学校や住宅に近接している用地だ。教育環境や住環境に影響する懸念があるため、市が議案を出す前に住民に説明した方が良いと考えるのが普通だ。住民に説明があり、それを聞いて議員に伝え、住民の声を市政に届けてもらう、それが本来あるべき住民参加による民主主義的な市政の在り方だ。北九州市は市民にデータセンターの良い点、悪い点を十分説明したのだろうか。少なくとも住民には説明していない。市が一連の手続きを踏まなかったのはなぜか、この一点の質問に答えてほしい」とのべた。市は「説明が足りなかった点は受け止めさせてもらう。ただ私どもが何も説明していなかったわけではない」と釈明した。
教師の発言封じる教委 工事中止の署名始まる
続いて発言した子ども会関係者は「市としては止めることができないと話があったが、住民有志で工事を一度止める、別の場所にさせるという請願署名が始まっている。行政ができないなら議会の力、政治の力でやるしかないと思う。そこで教育委員会に質問する。今回のデータセンター問題、なぜ小学校の真横なのかと多くの保護者が疑問に思っている。複数の保護者が先生たちにいろいろ質問をするが、すべて“ノーコメント”といわれるそうだ。なぜなのか。ひびきの小学校以外の学校も含めて、複数の教職員、心ある教育委員会勤務の方から個別に相談があった。教育委員会から“保護者や地域からなにか聞かれてもノーコメントとすることと通達が来ている”と聞いた。賛成、反対といってはいけないといわれた先生もいた。また建設の一時中止を求める請願署名に協力してはいけないといわれた先生もいる。ある先生はいっていた。“今回、児童の生活環境、教育環境に影響があることなので、教育委員会は行政とは独立した機関であるわけだし、市の方針があったとしても、児童のことを何よりも優先して考えるなら、教育委員会として建設見直しを提案すべきではないか。今回、私たちにノーコメントを強いること、教育委員会として見直しを求めないことは理解できない”と」とのべた。
続けて「別の人は“学校と保護者、地域で力をあわせて児童の教育環境を守る、向上させることが本来のあるべき姿なのに、今回は保護者を敵に回しているかのようだ。そもそもデータセンター建設は政治的でもなんでもなく、生活の問題だ。公務員であろうが、一個人に考えを強制することは憲法が保障する思想信条の自由に反するものではないか。教育委員会がそんなことをしていいのか”といっていた。子どもたちのために頑張っている先生たちを押さえつけるようなやり方はおかしくないだろうか。データセンターが子どもたちにまったく影響がないなら保護者は何もいわないかも知れない。しかし騒音、排熱、低周波の懸念もある。もうすでに子どもたちから“またうるさい工事があるの”“何ができるの”“工事している横を通るのが怖い”と不安の声が出ている。すでに子どもたちに影響が出ている。データセンターができたらモニタリングをするという話があったが、子どもたちを実験台にするのか。子どもたちのために教育委員会は建設の見直し、別の場所に移すことを市に対して求めるべきではないだろうか。そして教師にノーコメントを徹底するやり方は撤回すべきではないだろうか」とのべた。
市教委は「質問は一つとなっているのにたくさん意見があった。教員の個人対応について一つ回答するのでいいか」と不満げにのべたが、会場のあちこちから「全部回答しろ!」「全部聞きたい!」との声が沸き起こった。だが市教委は回答を教員の個人対応のみに限定し「教員一人一人が個人の考えを持つのは否定しないが、保護者の不安などに対応するのは教育委員会だ」と説明しただけだった。
続いて質問した男性は「データセンターというインフラ自体を否定するわけではない」と切り出し「地域の安心安全、子どもたちの命を第一に考えたとき、なぜ小学校の横でなければならないのか、について納得できる理由がない。事業者側の都合で選ばれたのではないかと感じる。子どもたちの安全リスクを冒してまで、なぜこの場所でなければならないのか。1300人の児童、保護者、住民が納得できる、この場所でならない明確な理由を聞かせてほしい。もし明確な理由が提示できないなら計画の白紙撤回、もしくは代替地へ変更を強く求めたい」とのべた。市は「事業者に幾つか候補地を提示したところ、学術都市がもっとも適切ということで選定された」と説明した。
爆発事故や低周波危惧 子どもは実験台なのか

北九州市が公開しているひびきのデータセンターのイメージ図(左上の建物がひびきの小学校)
建設予定地近くに住むひびきの小児童の父親も「データセンターに反対しているわけではない。でも建てる場所はここではない。最初からずっとそう考えている。質問は一つ。子どもたちのこと、それ一点だ」とのべ、「騒音、排熱、低周波などが学校生活に与える影響について事業者ではなく、市が具体的に調査しているのか」と質問した。そして災害時の避難所としているひびきの小学校がデータセンターで事故が起きたときでも使えるのか、もし使えないなら代替地をどこにするのか、どのように避難するのかという避難計画があるのか、について問いかけ、「もし計画があるなら住民に示すべきだし、計画がないのならなぜ子どもたちへの影響を確かめることがないまま工事を今も進めているのかと思う。私たちは子どもたちには安心して学び、友だちと笑い、何事もなく家に帰る、そんな当たり前の日常を守ってあげたいだけだ。そのため私たち大人、保護者が必要な検証をおこなうまで工事を一時中止するよう北九州市から業者に求めてほしい」とのべた。
続いてマイクを握ったひびきの小児童の父親も「データセンターは必要と思うが、建てるのはここではないと思う。子どもになんと説明したらいいかわからない。経済的に潤えば子どもたちや市民の安全はどうなってもいいのか。別の場所を考えてほしい」と発言。本城地区から参加した男性は工事中の通学対応にふれ、「市は“まだ十分でないかも知れない”といっていたが、十分になってもらわないと子どもたちを通わせる保護者としては心配でしょうがない。なぜ対策が完全ではない段階で話がどんどん進んでいくのか」と疑問をぶつけた。
また塩屋地区から参加した男性は「データセンターには非常用電源としてリチウムイオン電池が使用されるのが一般的だが、消防庁の資料でも示されている通り、リチウムイオン電池は消防法の危険物に該当し、一定量をこえれば厳重な管理が求められる危険物施設として扱われる。地震、落雷、熱暴走による爆発や有毒ガスの発生、大規模火災が万が一起きた場合、すぐ横には避難に時間を要する約1300人もの子どもたちがいる。先ほどから安心安全が第一といわれているが、このような大量の危険が伴う施設を小学校の真横に建てること自体、防災上妥当なのだろうか。このリスクを踏まえて事業者や市は地元消防署とどのような協議をしてきたのか。リスク想定や避難計画を文書にして公開していただきたい」と発言した。
塩屋地区から参加した女性は「低周波が問題になれば対応すると説明したが、そもそも影響がないとわかるのは何十年もたってからだ。海外のデータだが、莫大な電磁波を浴びることにより認知能力、読解力、集中力の低下、慢性的なストレス等のリスクが高まるという情報もある。そうなってからでは遅い。大切な子どもたちが実験台になるのは到底容認できない。前回の説明会でも子どもたちへの影響についてこれから確認しますとのべていたが、すべて今から確認します、だ。リスクを洗い出すこともせず、なぜ誘致や土地売却を進めたのか」と指摘した。
そのほか「海外では軍事攻撃の標的になった。小学校横へのデータセンター計画が本当にふさわしいのか」「低周波の影響を考えたことがあるのだろうか。登壇している方々の子どもがデータセンター横の小学校に通うことを想定して考えてほしい」「説明会では十分な対話をして工事を進めていくといわれるが、十分な対話や納得がなければ建設は進まないと思っていいのか」などの質問も出ていた。
工事着工年内は見合せ 事業者が公表
なお翌日の10日にデータセンターを整備する事業者も取材禁止の住民説明会を開き、11月頃としていたデータセンター1棟目の着工について「年内は見合わせる」と公表した。北九州市は18日にひびきの小学校で保護者説明・意見交換会(取材禁止)を開くことを明らかにしている。
「なぜ学校の真横に造るのか」 北九州市ひびきのデータセンター建設計画 住民説明会で父母らから疑問噴出 2026
IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2026 2026-10-23 13:40:25
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