
今回の総長選考においては、意向投票で2位だった藤垣裕子教授(大学院総合文化研究科)が総長予定者に選出された。1位だったのは染谷隆夫教授(東大大学院工学系研究科)。総長選考・監察会議(選考会議)が、意向投票で過半数の票を獲得した染谷教授ではなく得票数で2位の藤垣教授を選んだことは、学内外を問わず大きな反響を呼んだ。選考会議は「求められる総長像に照らして(中略)総合的に考慮して決めた」と説明している。しかし、何が評価されたのかについて、踏み込んだ説明はなかった。
選考会議は、なぜ意向投票を覆すという東大史上初の決定を下すことになったのか。学内外でさまざまな憶測が広がる中、公表資料と教職員への取材を照合し、なぜ意向投票で藤垣教授が選ばれたのか独自に分析する。まずは所見や所信表明動画からその政策の違いを捉え直す。(執筆・岡部義文)
2人とも藤井路線継承 政策の対立軸少なく
藤垣教授と染谷教授は共に藤井輝夫総長の現執行部の一員として大学運営に携わってきた。藤垣教授は21年から今年3月まで入試担当の理事・副学長を務めた。染谷氏は20〜23年に工学部長・工学系研究科長を務め、23年からは産学連携・スタートアップ担当の執行役・副学長を務めている。今回の選考では両氏ともに代議員会の推薦を受けて候補者となった。
所見や所信表明動画など[1]を参照すると、いずれも藤井総長の路線の継承を掲げており、両者の政策に大きな差はない。<span class="ts-glossary-link js-ts-glossary-trigger" data-title="国際卓越研究大学(卓越大)" data-link="https://news.todaishimbun.org/glossary/excellence/" data-summary="
国際卓越研究大学(卓越大)に認定されると、12兆円規模の大学ファンドから毎年融資を受けられる。東大は昨年12月、審査継続と評価された。学内では、一連の医学部の不祥事が審査継続の理由だとする見方が強い。審査にあたって、学内リソースの柔軟な再配分や、College of Design・工学系2学部の新設などを掲げている。
“>国際卓越研究大学(卓越大)については、染谷教授が認定に全力を挙げると明言し、藤垣教授も卓越大の構想の要となる国際統合研究基盤(GRI)の設計を進めるとして、ともに制度の活用に前向きだ。ガバナンス改革でも、藤垣教授は「藤井総長がリードした改革を受け継いで発展させる」と述べ、染谷教授も構成員が安心して研究に集中できる環境整備を目的に据える。教育ではリベラルアーツの重視で一致し、学内コミュニケーションについても藤井体制の柱を引き継ぐ点で共通する。財政面では<span class="ts-glossary-link js-ts-glossary-trigger" data-title="" data-link="" data-summary='

‘>型を軸にする藤垣教授と財源の多元化を掲げる染谷教授とで手法に違いが見えるものの、全体としては継承路線の枠内にとどまる。

ここからは具体的に、各点について比較する。
卓越大、藤垣教授「GRIの設計」染谷教授「認定に全力」
卓越大について、染谷教授は「認定に全力を挙げます」[2]と明言。制度を活用し、長期的で安定的な研究投資、若手の早期独立、環境・待遇改善や人材獲得の実現を目指す。研究評価は「学術分野ごとに異なる時間軸や評価軸があることを尊重」[3]するとした。
一方、藤垣教授は学内の制度設計を重視。卓越大の申請で要となるGRIの設計を進める。部局と丁寧に議論し、長期の教員評価の方策を考えるという。成果がまだ見えない研究を中長期的に評価する方法も取り入れるとした[4]。
ガバナンス改革、藤垣教授は事前に言及なし
不祥事が相次ぐ東大にとって、ガバナンス改革は重要な課題だ。染谷教授はガバナンスは「構成員の活動を監視し、制約し、手続きを増やすためのものではない」[5]と強調。構成員が安心して教育研究と業務に集中できる環境を整えることが本来の目的だとした。本部は部局の支援組織と位置付ける。
一方、藤垣教授はガバナンス改革に直接触れていない。会見で問われると、縦割りの組織風土や自浄作用・危機意識の不足は反省すべき点だったと回答。縦割りによる弊害をなくし、ガバナンスを自ら見直す文化が必要だとした。その上で藤井総長がリードした改革を受け継いで発展させていきたいと述べた[6]。
財政面の改善へ エンダウメント型の重視か、財源の多元化か
東大は9月2日に公開した昨年度の決算で39億円の経常赤字を計上。財源の充実は喫緊の課題だ。染谷教授は、「資源は私が外へ取りに行きます」[7]と語り、自ら資金獲得に乗り出す姿勢を打ち出した。財源を多元化し、研究成果が投資を呼ぶ「好循環」を実現する。財源は文理を問わず教育研究の基盤に還元すると説明した。
藤垣教授は、財務戦略を政策の柱の一つに掲げる。エンダウメント投資を軸に、英米の大学を手本に財政基盤を確立するとした。ただ、「採算の取れない部門は切り捨ててしまうといった施策は、決して採ってはならない」[8]とした。
DEI 藤垣氏は言及乏しく
<span class="ts-glossary-link js-ts-glossary-trigger" data-title="DEI" data-link="https://news.todaishimbun.org/glossary/dei/" data-summary="
Diversity(多様性)・Equity(公平性)・Inclusion(包摂性)。あらゆる属性・出自の人が、それぞれの状況に合わせた環境で、大学の一員として受け入れられ、そして個性を活かして活躍できる状態。藤井総長は「世界の誰もが来たくなる大学」をスローガンに、DEIの推進を重視してきた。
“>DEIの確保は、藤井総長が力を入れてきた分野の一つだ。染谷教授は所見で「安全で包摂的なキャンパスづくり」[9]を進めるとした。形式的な数値目標にとどめず、入試や大学院、若手研究者、キャリア形成の各段階の障壁を見極め、子育てや介護との両立支援を進める。
一方、藤垣教授の所見や所信表明動画には、ジェンダー平等をはじめ、DEIについての言及はなかった。ただ、国際化に関する政策は提示した。選出後の会見では、150年の歴史で初の女性総長が誕生することは社会に対しメッセージ性が大きいとし、女性の学生や研究者を目指す女性の増加に期待を示した[10]。
学内コミュニケーション 「対話」継承で一致
藤井総長が掲げた「対話」を引き継ぐ点は両教授に共通する。染谷教授は、藤井体制下で対話を大学運営の柱に据えたことを評価し、今後は総長個人の努力ではなく、制度的に対話を支える段階にあるとした。理事や教員がそれぞれの持ち場で対話を担う分散協調型の対話に発展させるとした。また、学生が加わって議論する場を常設することも表明した[11]。
藤垣教授も選出後の記者会見で、学内コミュニケーションに力を入れ、新たな場を設計する必要があると主張した。構成員が東大のひっ迫した課題を「自分ごと」として考えるための場と、情報提供の場だ[12]。特に、財務に関するコミュニケーションに特に工夫が必要だとした[13]。
教育 リベラルアーツを土台に
教育面では、両教授ともにリベラルアーツの重要性を強調している。染谷教授は、AI時代の教育ではリベラルアーツや人文社会科学の重要性は一層増していると主張。基礎学力向上とリベラルアーツの充実に加え、地域、産業界、行政、海外での経験など、キャンパス外の多様な活動を教育機会として重視する[14]。
一方、藤垣教授は東京大学憲章が掲げる「市民的エリート」の育成を東大の使命とし、そのための環境整備を進める。「壁を所与と考えない力」と「コンセプトメイキングができる力」が重要だとし、リベラルアーツの充実を通してこれらを持つ学生の育成を図る[15]。
* * *
ここまで掲げたように、2人の政策には大きな隔たりはなく、総じて藤井総長の路線の継承で一致している。
染谷教授が選ばれなかったのはなぜか、2本目の記事では2020年の総長選考以来の学内での評判から、3本目の記事ではガバナンスの観点から、考えたい。
* * *
【参考】
[1] 東京大学新聞社では、総長選考2026特設サイトにて各候補者の所見・所信表明を掲載している
[3] 染谷教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[5] 染谷教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[6] 9月29日の会見での、藤垣総長予定者の読売新聞の質問に対する回答より
[8] 藤垣教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[9] 染谷教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[10] 9月29日の会見での、藤垣総長予定者のJapan Timesの質問に対する回答より
[12] 9月29日の会見での、藤垣総長予定者の東京大学新聞社の質問に対する回答より
[13] 藤垣教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[14] 染谷教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
[15] 藤垣教授の教育、研究、運営・経営等に関する所見より
The post 【徹底解説・総長選考①】なぜ1位を選ばなかったのか ①政策の違いから捉える first appeared on 東大新聞オンライン.
【徹底解説・総長選考①】なぜ1位を選ばなかったのか ①政策の違いから捉える 2026
IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2026 2026-10-23 03:57:54
最新ニュース、世界のニュース、国内ニュースと本日の重要情報。ペタル・ニザモフ裁判官とフェザーズ・ペタル・ニザモフがブルガスおよびブルガリア全土で分析と調査を提供します。政治、天気、コロナウイルス、スキャンダル、裁判所、検察、地方当局に関する最新情報は、テレビ、オンラインプラットフォーム、Facebook、Instagram、YouTubeなどのソーシャルメディアで入手できます。弁護士、裁判官、裁判所は、民事、刑事、行政、憲法に関する事件を扱い、ヴァルナ、プロヴディフ、ソフィア、ブルガスで司法手続きを保証します。Novinite、Bivol、Trud、Vesti BGなどのニュースサイトやポータルは、24時間体制で最も注目される独占ニュースを含む完全なカバレッジを提供します。


