9月29日、総長予定者決定に伴う記者会見が本郷キャンパス山上会館大会議室で行われ、次期総長予定者の藤垣裕子教授(大学院総合文化研究科)と総長選考・監察会議(選考会議)の国谷裕子議長らが出席した。国谷議長は意向投票とのズレについて、批判は予想されるが大きな問題は生じないだろう、との見解を示した。
選考会議の国谷裕子議長は「会議が自らの責任において、主体的に選考を行うこと、その過程や考え方についてできる限り大学構成員や社会に対して説明可能な選挙とすること」を重視したと説明。求められる総長像に示した資質・能力・実績の観点から、資料・所信表明・面接・意向投票などを判断材料として選考に当たったとした。
藤垣教授を次期総長に選んだ理由については「文理融合、学外・学内のコミュニケーションの充実を通じた多様な知の発展に向かって、幅広い国際的な経験をもとに、より開かれた大学に向けた変革を実現する十分な能力を持っている」とした。性別については選考会議で議論の対象にならなかったとした。(記事末尾に、選考会議の発表の全文を掲載)
藤垣教授は、次期総長予定者への選出に「大きな重責を感じている」とした上で、厳しい財政状況や社会の学術への信頼が揺らぐ中で「『大学とは何か』という原点に戻って」考えたいと述べた。財政では英米の大学を手本としながらも、米国での学術への信頼低下を踏まえつつ、日本及び世界の学術をけん引することが東大の役割だとした。

質疑応答の概要
藤垣教授に対する主な質問・回答の概要は以下の通り。
──藤井総長はUTokyo Compassを軸として掲げました。UTokyo Compassをどう継承していくべきと考えますか
UTokyo Compassは継承していきます。藤井総長が特に力を入れられてきた「対話」に含まれる、学内コミュニケーションに力を入れるつもりです。
学内コミュニケーションについて、総長対話や部局長を通じた情報伝達だけではなく、別の形での参加方法を充実させたいと考えています。東大の構成員が、本学のひっ迫した課題を自分事として考えるための場、そのために必要な情報提供の場の設計に取り組んでいきます。
──女性初の総長についてどう受け止めていますか
来年東大は150周年を迎えます。150年経って初めて女性総長を生み出すことは、社会に対しメッセージ性の大きいことだと感じます。女性の学生や、研究者を目指す女性が増えることを期待します。
──意向投票で得票数が過半数に満たなかったことについて、どう受け止めていますか。意向投票で藤垣教授に投票しなかった教職員が多数存在する中で、どのように学内との信頼構築を図りますか
得票数を見る限り(意向投票の投票2回目での藤垣教授の得票率は25.5%)、学内の4分の1に所信表明動画でのメッセージが届いていることに自信を持っています。残りの4分の3にどれほどメッセージが届いているか分かりませんが、文理の壁を越え、学内外のコミュニケーションの充実に力を入れていきます。
──不祥事が目立つ中で、ガバナンス改革についてどう考えますか
縦割りの組織風土や、自浄作用・危機意識の著しい不足は大変反省すべき点だったと強く思っています。藤井総長の下でのガバナンス改革では、反省を踏まえた全学的なリスクガバナンスの体制、学内コミュニケーションの充実を図ってまいりました。外部の有識者からのモニタリングも含めて、しかるべき方向に動いていると考えています。
社会からの信頼を得て、東大の発展を支える強固なガバナンスを確立するためには、部局、職種などの縦割りによる弊害をなくし、自分自身の力でガバナンスの仕組みや運用を見直しながら、より良いものに発展させる文化を定着させることが必要です。新しい制度の運用、学内外とのコミュニケーションを継続的に行い、藤井総長がリードした改革を受け継いで発展させていきます。
──新学部・UTokyo College of Design(UT/D)へ何を期待しますか
UT/Dは、これまで縦割りだった学問分野を交わらせる意図があって作られています。いろいろな分野を横断して、新しい学問領域を作っていける人材を作りたいです。日本は既存の分野をつなぐ研究が少ないので、その欠点を補える学生が育てられるのではないかと期待しています。
──自身の経験や専門分野について、どの点が今後の6年間に生かしていけると思いますか
私の専門の科学技術社会論は、科学技術が社会との接点で起こす問題や課題を分析し、解決する学問です。科学技術に対していろいろな人文社会系の方法論を用いたアプローチをします。専門分野自体がいわば文理融合であるともいえます。その中で日々、分野ごとの文化の差異を実感しているので、そこは評価されたのかなと思います。
隣接分野として科学技術コミュニケーションという分野があり、総合文化研究科でも科学技術インタプリタ―養成プログラムの運営に10年近く携わってきました。何年も考えてきたコミュニケーションについてのさまざまなことを、大学ガバナンスに生かしていきたいと考えています。
国谷議長に対する主な質問・回答の概要は以下の通り。
──教員による意向投票で藤垣教授は第2位の得票でした。結果的に意向投票を覆す形で総長予定者を藤垣教授に決定しました。意向投票と最終的な決定とのズレについてどのように受け止めていますか
6年間の東大を託すに値する人材を、さまざまな資料、面接などに基づいて丁寧に議論を尽くして選出しました。結果的に意向投票を覆す形になったことについて批判が全くないとは思いませんが、大きな問題が生じるとも思いません。選考プロセスの透明化、選考理由の明確化により理解を得るつもりです。意向投票はあくまでも選考資料の一つ、という認識です。
──28日に行われた総長選考・監察会議での協議が午後1時ごろから午後9時ごろまで長引いたのはなぜですか。協議の中で意向投票の結果を覆すことに異論は出ましたか
議論の中身に関して、各候補者に対する具体的な議論などはお話できません。選考会議では、まず何を大事に検討すべきかや、意向投票の受け止め方について協議した上で、候補者一人一人の強み、弱みについて各委員の意見を議論し、単記無記名投票による委員の意思確認も繰り返し、最終評決に至りました。
総長選考・監察会議による選考理由の説明
藤垣氏は、理事・副学長の経験を通じて、本学が学術界の象徴、シンボルであることを強く意識し、専門分野である科学技術を社会に伝えるコミュニケーション力を活かして、学術への信頼を回復する強い意思と能力を備えていると判断した。激変する社会環境の諸問題を解決する鍵は新たな価値創造にある。そのためには先進化する技術の活用の在り方に多様な知を活かして、チームワークで事前にリスクに対応し、学術への信頼を高め、大学という組織を発展させることが希求される。同氏は、文理融合、学外・学内のコミュニケーションの充実を通じた多様な知の発展に向かって、幅広い国際的な経験をもとに、より開かれた大学に向けた変革を実現する十分な能力を持っている。壁を所与と考えない力、障壁を生む分断を乗り越える力を本学が持つために、同氏の知見と能力を評価し、総長選考・監察会議は同氏を次期総長予定者として選考した。
(選考会議の公表資料より一部抜粋)
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【総長選考2026】藤垣裕子教授の次期総長選出で会見 選考会議「意向投票とのズレは大きな問題ではない」 2026
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