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下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026

Юстиция Иванова by Юстиция Иванова
May 29, 2026
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綿密な調査報道、公共の利益に関する記事、ニュース、厳選されたジャーナリズムのレポートを掲載する調査報道ウェブサイト

調査報道の記事やジャーナリズム関連の出版物を厳選して紹介しています。この画像は、調査報道と公共の利益に関わるテーマに重点を置くウェブサイトの特徴を示しています。

(2026年5月22日付掲載)

下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 xia zhu noyi kimo 2026 (2026年5月22日付掲載)
<span style="font-size: 10pt; font-family: arial, helvetica,... Iustitia. Bg 下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 2026-05-29 07:48:17 正義

操業を停止し、伊崎漁港に係留されたままになっている巻き網船団「泉宝丸」(19日、下関市)

 下関市で長年中型巻き網漁を操業してきた「泉水産」が、この春廃業した。数年前から船員の高齢化による人手不足や漁船の老朽化等の問題を抱えながら下関漁港で水揚げを続けてきたが、今年の漁期が始まる4月末頃に「人手不足により漁が続けられない」ことが市場関係者らに伝えられたという。下関では最盛期には5つの巻き網船団があったが、泉水産が廃業したことで地元の巻き網船団はゼロになった。アジ・サバ・イワシといった魚を長年安定的に水揚げしてきた船団が抜ければ、裾野の広い水産都市・下関の産業全体が大きな打撃を受けることとなる。最後の砦となっている以東底引き船団も燃料・資材の急騰が直撃しており、市内の水産業関係者の間では泉水産の廃業とイラン情勢の影響といった二重の不安要素に対し、水産都市下関の将来への懸念が高まっている。

&nbsp;

食料の確保は最大の安全保障

 

 泉水産が操業してきた中型巻き網漁船団「泉宝丸」は、網を張る網船、その網を引いて魚を囲い込む集魚船、とった魚を運ぶ運搬船(2隻)、集魚灯を炊く灯船で構成されていた。下関市豊北町の角島と、蓋井島の中間辺りを漁場とし、アジ、サバ、イワシを主に漁獲。巻き網の漁期は3月15日から12月15日までの9カ月間で、泉宝丸はだいたい4月末頃から11月末頃まで出漁していた。

 

 泉宝丸ではこれまで運搬船が2隻あったが、船員の高齢化にともなう人手不足により昨年から運搬船が1隻減り、船団は5隻から4隻体制となっていた。巻き網漁は夕方に出港し、夜中に沖で集魚灯を焚(た)いて魚の群れを集め、それを袋のような形をした網で外側から囲い込んで漁獲するという漁法で、通称「巾着」とも呼ばれる。

 

 昨年から運搬船が1隻になったことで、本来なら複数回投網できるはずが1回しか投網できなくなり漁の効率は悪化。また、一度しか網を回収できないためできるだけ魚を集める時間を長くとらざるをえないため、帰港時間が遅くなって競りの開始やトラック便の出発に間に合わずに値が下がるという悪循環もあり、人件費の確保なども困難になるという側面もあったという。さらに親船の老朽化も進み、故障が増え維持管理費も嵩んでいたことがネックになっていたという。

 

 こうした問題を解決するために、泉水産としても外国人船員の導入などを検討して人手を確保し何とか漁を続けられるよう動いていたものの、折り合いが付かなかった。泉水産の社長自身も昨年までは83歳ながら船員たちと一緒に船に乗り込み漁をしており、「人さえいればまだまだ漁を続けたかった」と語るが、どうしても乗組員の確保が難しく、今期の漁期開始直前で操業停止を決めたという。

 

地元水産業支えた船団

 

下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 xia zhu noyi kimo 2026 1 (2026年5月22日付掲載)
<span style="font-size: 10pt; font-family: arial, helvetica,... Iustitia. Bg 下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 2026-05-29 07:48:17 正義

下関中央魚市場での競り(21日)

 下関漁港では8月の盆明けから5月半ばまでの間は、主力である以東底引き網船団が水揚げをおこなっている。この船団が休漁期を迎えると下関漁港に水揚げされる魚の量も大幅に減るため、この3カ月間は下関の水産業界は谷間の時期にさしかかる。その谷間を埋めるように、毎年5月頃から泉宝丸の巻き網漁が始まり、水揚げされる地物のアジ・サバ・イワシは下関の水産業関係者からも頼りにされてきた。だが今季からはその巻き網の魚が入らなくなっており、例年にも増して下関漁港への水揚げは少なくなっている。

 

 泉宝丸以外にも、福岡県や長崎県の巻き網船団が下関の近くで漁をしたときや、福岡の市場で荷がだぶついて値が下がっているときなどは下関漁港で水揚げすることもある。だがこれらは不定期であるため、泉宝丸ほど頼りになる存在とはいえないという。

 

 下関市内のある鮮魚店主は「泉宝が廃業すると下関の仲買や魚屋だけでなく、箱、氷、運送など関係する業者すべてにとってダメージが大きい。日本全国いろいろな魚を扱ってきたが、泉宝が操業していた漁場のアジは全国トップクラスの品質だった。脂の乗りはいわずもがな、朝に捌(さば)いて夕方まで置いていても身がカチッと締まっていて、身が緩くなる他の産地のアジとの差は歴然だった。だから夏にかけての時期はとくに頼りにしていたのだが、今年から廃業ということでどう商売をしようかと頭が痛い。胸を張って売れる下関の魚を失うのは地元の魚屋としても心苦しい」と話していた。

 

 市場関係者も泉宝のアジの品質について、「萩の瀬付きアジなども有名だが、萩、長門、下関の北浦沿岸のアジはとても質が良い。そのなかでも泉宝がとってきていたアジは“銀アジ”と呼ばれ、“黒アジ”といわれる萩などのアジとも違い、脂の乗りが良く評価も高かった」と話していた。量、質ともに下関の水産業界を支えてきた巻き網船団がなくなることを惜しむ声は多い。

 

 市内の仲買業者は「寿水産(豊北町)がなくなり、最後の巻き網だった泉宝も廃業することになり、地元産のアジ・サバ系が消えた。泉宝は月夜以外の凪(なぎ)の日は毎日出ていた(空が明るいと灯を焚いても魚が集まらない)。とくに5月から8月半ばまでの以東底引きの休漁期間、下関の水産業は泉宝の水揚げに支えられていたようなものだったので、廃業の影響はかなり大きい」と語る。

 

 九州方面からの巻き網船が不定期で入港して水揚げしたり、長崎などからの陸送でアジ・サバ系の入荷はあるものの、安くて新鮮な泉宝の魚はそれらとは一線を画す存在だったという。「価格面で見ると、船から直接水揚げする“生きモノ”の方が安い。中央魚市では高度衛生市場になって木箱が使えなくなっているので、陸送物は運送費がかかるうえ小ロットの5㌔、7㌔建てなどで入荷するので単価は高くなる。一方で、泉宝は1箱20㌔あったので絶対的に安く、仲買業者や小売業者にとっても頼りになる存在だった。下関から“生きモノ”がなくなることによる弊害はこれから出てくるだろう」と話していた。

 

 別の仲買業者は「泉宝は山口県でも一番古い歴史を持つ巻き網船団だと聞く。そういう歴史ある漁業が消滅していくのを下関市は黙って見ているだけでいいのだろうか。以前から続けていくのは厳しいといわれていたが、こうなる前に少しでも打つ手はなかったのだろうか。地元で最後の巻き網船団が廃業するということは、ただの一般企業が倒産するのとは訳が違う。私たち仲買業者も以東底引きが休みの間は商売上がったりだ。泉水産廃業の代償はとても高くつくだろう」と話していた。

 

 また、市場関係者は「今は交通網も発達して他県の市場からもトラック便などで荷が集まるが、本来市場というのは地元の魚があってこそ成り立つものだ。これまで下関漁港に荷を持ち込んでいた他県の巻き網船団やトラック便も、泉宝が安定して水揚げする魚の品質や価格に“あやかる”形で集まってきていた。これから下関に水揚げされる巻き網の魚がゼロになるということは、下関漁港としての品質、価格の基準を失うことになる。他所の市場の相場を基準にするしかないので、市場としては競りで強く出にくくなるだろうし、このことによる値崩れも心配だ」と話した。

 

 この時期は泉宝丸が水揚げするアジやサバなどを求めて中央魚市場に仕入れに来る業者も多く、まとまった量が確保できることから養殖業者のエサとしても頼りにされていたという。そうした業者は下関漁港で量を確保できなければ他の市場を頼るしかなくなる。市場関係者は「仲買業者に下関で買ってもらうためには他所の市場からアジサバを仕入れなければならず、そこは市場としても努力しないといけない。とはいえ市場もボランティアではないので、わざわざ運送代を上乗せして相場よりも高い価格で市場に荷を引っ張ってくるようなことは簡単にはできない」と話していた。

 

 下関市内のある漁師は「泉宝丸では何年か前に船長が船の上で亡くなったり、最近も船長をしていた人が辞めたりと船員の高齢化や人手不足は厳しいようだった。給料面でも乗組員と話が合わなくなったという話も聞いた。運搬船が一隻になってから水揚げも思うように伸びなかったのだろう。テレビでは漁業でもうかっているというようなことをいっている番組もあるが、そんなのはほんの一握りだ。もうかっているならこれだけ人がやめていくこともないし、漁師が減ることもない」と話していた。

 

最後の砦・以東底引も…

 

下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 xia zhu noyi kimo 2026 2 (2026年5月22日付掲載)
<span style="font-size: 10pt; font-family: arial, helvetica,... Iustitia. Bg 下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 2026-05-29 07:48:17 正義

長崎県対馬沖で操業する下関の以東底引き漁船(2016年10月)

 下関の水産業関係者の間では、泉水産の廃業による影響への懸念に加え、イラン情勢の悪化にともなうあらゆる漁業資材の値上げや不足に対する不安が日に日に強まっている。

 

 「水産都市」下関の最後の砦である以東底引き網漁業も、燃料高騰とあらゆる資材の値上がりが経営を圧迫している。現在、下関漁港を根拠地として6カ統(12隻)が操業中で、アンコウやアカムツ(ノドグロ)、ヒラメ・カレイ類、タイ類などを中心に、水揚げ量は2023(令和5)年で3621㌧、水揚げ金額27億7186万円にのぼる。下関漁港の水揚げの絶対的な主力だ。

 

 2艘曳きの以東底引き船は、漁場が下関漁港から約200㌔離れた海域で、一航海およそ1週間操業して帰港する。一航海で使うA重油は約30㌔㍑にのぼるという。この10年ほどをふり返ってもA重油の価格は多くの期間、1㍑70~80円台ほどで推移。約5年前の2020年を見ると、春先には1㍑40~50円台の時期もあった。円安などの影響でここ数年A重油の価格も上昇傾向にあったが、昨年までは高い時期でも1㍑100円以下だった。しかし、ホルムズ海峡が封鎖された今年3月以降に急騰し、4、5月は130円台まで値上がりしているという。

 

 一例を見ると、1月…96円、2月…100円、3月…124円、4月…131円、5月…135円となっている。今年1月からだけでも約40円の値上がりだ。4月は政府の補助で110円台になるという情報が流れていたが、蓋を開けてみると値下がりどころか大幅な値上がりになっていた。

 

 全国的に燃料価格は高騰しているものの、県外の漁船の燃料事情を聞いてみると、山口県は他県に比べて高いという独自の事情もあるようだ。

 

 1㍑70円で考えると、一航海でかかる燃料費は210万円ほどだ。それが130円になると約400万円と2倍になる。ある関係者は、「一航海で燃料費が400万円かかるということは、月に4航海すると1600万~1700万円の請求が来るということだ。今期の漁で燃料高騰が直撃したのは終盤の3、4月だけだったが、この状況が来期(8月15日出港)まで続いた場合、10カ月間の漁期で燃料費負担は1億6000万~1億7000万円になる」と話す。A重油だけでなく、エンジンオイルも4~5㌔㍑使うため、すぐに100万~200万円になってしまうという。

 

 一方の水揚げは、月800万~1200万円ほどだという。今期の水揚げは、多い船でおよそ4億4000万円、少ない船では3億7000万~3億8000万円だった。関係者の一人は、「燃料だけでなく、発泡スチロール、ロープ、網、ワイヤーなどすべての資材が値上がりしている。かつては3億円の水揚げがあれば利益が出るといわれていたが、今は4億円の水揚げでも厳しいくらいだ」と話した。

 

 さらに、5~8月の休漁期間に、どの船もドックに入り、メンテナンスや資材の調達をおこなうが、これが資材不足・高騰がもっとも深刻な時期に重なっており、これから3カ月間、収入がない時期に高騰した分のさまざまな支払いに直面する。資材不足も懸念されており、「塗料がなくなるかもしれないということで、3月に早めに種類を変えて似たような色を確保した」「どれだけ請求が来るか恐ろしい」と不安が語られている。

 

 魚価は、漁業者の減少によって「肌感覚で5~10%上がっている」といわれるが、生産費の高騰をまかなえる水準ではない。農業と同じく、漁業者も自分で価格を決定することができない、つまり価格転嫁できない仕組みだ。なかには中国向けの輸出が滞り、むしろ安値になっている魚種もあるようだ。仲買も輸送費や資材が値上がりしているなかで、生き残るためには魚をできるだけ安く買いつけるしかないため、末端の生産者にしわ寄せが行くのも現実だ。

 

造船・資材業者の影響

 

 以東底引き船団に関わる業種は多岐にわたる。どの業者も資材高騰や不足に直面しながらも、最先端の現場で頑張っている生産者を支えようと必死だ。下関市内の漁業関連資材業者によると、ロープやワイヤー、漁網などの漁具から、ポリ袋、パーチ(水揚げする魚の上に敷くナイロン製のシート)といった細かな資材に至るまで、あらゆる石油由来の製品が値上がりしているという。出荷停止になっている商品も多く、いつ手に入るかも今後どれだけ価格が上がるかも分からない状況だという。

 

 担当者は「以東底引き船団は8月からの漁再開に向けて、この期間に漁船設備のメンテナンスをしたり資材を確保する。資材が一番値上がりしている時期と重なってしまったので、船主側は本当に不安だと思う。うちもいつ入荷するか分からない資材が多数あるが、とりあえず必要な分だけ発注をかけておいて、値上がりした場合はその分をうちが被ってでもいいから、とにかく現場に資材を届けることを最優先に動いている」と語る。

 

 以東底引き漁船のメンテナンスや定期検査などをおこなう造船所では、船体の塗装に使う塗料やシンナーがかなり手に入りにくくなっているほか、目張りをするためのマスキングテープやビニールシートなども枯渇しているという。資材調達に関わる担当者は「この春から7月にかけてあらゆる資材が値上がりしている。通常の値上げなら高くても10%とかだが、30%とか50%一気に値上げするというものも少なくない」という。

 

 なかでもエンジンオイルの枯渇は深刻だといい、「造船所のドックに船を入れたら最初にエンジンオイルを抜く。その後修理などすべての作業が終わってもオイルが調達できず、“ないよりはマシだ”ということで古いオイルを戻すかという話まで出た。結局ギリギリで調達できたが、20㍑缶10缶分という量をわざわざ関東から車で運んできてもらった。そのくらいどこを探してもオイルが手に入らない。毎年以東底引きの漁船のメンテナンスをしているが、今年はいろんな資材の価格が値上がりしていて船主さんは頭が痛いと思う」と話していた。

 

 この他にも資材の値上げは深刻で、例えば漁師がとった魚を市場に出荷するさいに使う発泡スチロールの箱は、3割値上げされるという。以東底引きでは1回の漁で1500~2000箱も使うため、箱代だけでも膨大に負担が増えることとなる。イラン戦争が長期化すればするほど資材高騰・枯渇も深刻化していく。以東底引きは8月から来シーズンの漁が始まるが、自然相手の漁で水揚げも未知数ななか、あまりに経費負担が増えすぎれば以東底引き船団にとっても甚大な影響が及ぶことが懸念されている。

 

国動かし早急な支援策を

 

 下関市内の水産業関係者の多くが、地元の漁業者が年々高齢化していき、後継者不足により企業・個人を問わず市場に水揚げする漁船がどんどん減っていく状況に危機感を抱いている。2023年漁業センサスによると、過去5年間で山口県内の漁業経営体数の減少率(全国平均17・0%)は24・4%で全国5番目に高く、高齢化率(全国平均39・2%)は58・0%で全国2番目に高い。全国に先駆けて衰退が進む状況のなかで、さらにイラン情勢の悪化といった要因も重なり、「もう個人の努力でどうにかなる状況ではない」「このままでは下関の産業全体が一気に沈んでしまう」と語られている。

 

 市場関係者の男性は「とにかく今は戦争の影響が今後どれだけ長引くかが心配だ。漁師は燃料も資材も値上がりして経費負担は増すばかりだが、その分魚価が上がるかといえば仲買も消費者もみなそのような余裕はない。このままの状況を放置すれば、末端の漁師から先にどんどん苦しくなっていく。もう個人でどうにかできる問題ではなく、行政も巻き込んで国を動かして真っ先に生産者を守るための施策を早く形にしなければならない」と危機感を示した。

 

 別の市場関係者は「以東底引きの野本水産が辞めたときも、今回の泉水産が辞めたときも、県や市が必死になって漁船を守ろうという働きかけは見られなかった。個人的には、県よりも下関市にもっと頑張ってもらいたい。魚あっての市場、船あっての街だ。下関市は水産都市であり、その根幹はこの下関漁港だ」と話していた。

 

 市内の漁業者のなかには、これまでも「高い」といわれ続けてきた燃料代がさらに高騰しているため、海が凪でも沖に出ない漁師も増えている。市内のある漁師は「うちも連休明けに何度か棒受けで出たが、漁が芳しくないから1週間以上休んでいる。軽油も200㍑2万8000円くらいするので、どんなに漁を頑張っても経費が出ない。だからみんな小さい船で、燃料消費が500㍉㍑くらいで収まるような近場の漁場で細々と漁をしている。だから水揚げもほとんどない」と話していた。

 

 イラン戦争による燃料・資材高騰のなか、政府の動きは鈍いどころか「なにもない」ことが現場の危機感をさらに強めている。以前からある「漁業経営セーフティーネット構築事業」(3カ月の原油平均価格が判定基準価格を上回った場合に差額を補填する)で、1~3月期(令和7年度第4四半期)は補填が発動し、1㌔㍑当り2万930円(1㍑当り約21円)補填されることが発表されてはいる。

 

 ただ、これは制度に加入して毎年積み立てをすれば、そのなかから国一、漁業者一の負担割合で補填金が支払われるという保険と同じ仕組みに過ぎない。自分の積立金が尽きない限り補填を受けることができるが、一方で毎年の積立金は高い枠で8500円(1㌔㍑)×購入予定数量、最安で1000円(1㌔㍑)×購入予定数量となっており、年間に大量に燃油を購入する船ほど積立金も高くなる。

 

 さらに、加入するさいに10年間で最大5%の省エネ(購入する燃油量の削減)目標を設定すれば国の助成割合が上がる仕組みだが、複雑な制度を理解するのも難しく、水産業の現場では燃油急騰に直面し、「セーフティーネットがあるから安心」という声はほとんど聞かれない。「請求書を見れば燃料が高騰しているのは歴然としているのだから、その分をシンプルに補填するような仕組みにならないのか」という切実な思いが語られている。

 

 下関市で見ると、ホルムズ海峡封鎖前の今年1月の臨時議会で、漁業生産資材(魚箱や氷代など)の高騰に対する補助金を山口県の物価高騰対策に上乗せして支給することを決めている(予算3600万円)。しかしこれも、沖合底引き、中型巻き網、定置網の場合、2025年の資材費のうち、2024年水準を上回る差額分を2分の1以内(上限150万円)で補助するという内容で、それ以降の資材急騰に見合う金額ではない。

 

 燃油については2022(令和4)年に1㍑20円を補助する事業(予算額1億2000万円)をおこなったのが最後で、現段階で支援策は検討されていない。「水産都市」を標榜し、観光資源として「魚」を売り出しているが、観光も産業あってのことであり、足元の産業が危機的な状況に対する下関市の姿勢が問われている。

 

 とはいえ、地方自治体単独での支援は限界があり、国の対策が急務となっている。燃油業界の関係者たちは、「アメリカ産やロシア産原油の輸入が増えているというが、輸送距離が長くなるので運賃・日数もかかる。円安の状況も加味すると、なかなか値下がりするという見通しは立てにくい」「現時点で潤滑油は本当に不足しており、売る物がなくて非常に厳しい状況だ」「漁船だけでなく産業用の燃料は優先的に確保するようにしているが、出荷制限もあり、思うように仕入れできない」と話しており、先行きが見通せない状況だ。

 

 このなかで漁業者が安心して操業できるようにするためには、もちろん原因である戦争の終結が急がれるが、同時に共済やセーフティーネット程度ではなく、生産コストと販売コストの差額を補填するなど、政府が食料生産を支える仕組みの構築が待ったなしとなっている。

 

 海に囲まれている日本の水産物自給率は、1970年代前半まで100%をこえていたが、2000年代初頭に50%台まで下落し、直近の2024年度でも魚介類52%、海藻類61%(重量ベース)と低迷したままだ。漁業者がいなくなっていく状況を放置することは、新鮮な魚が食べられなくなることを意味し、有事となれば輸入魚ですら手に入らなくなることを意味している。漁業者がいなくなってからでは遅く、早急な制度確立が求められている。

下関最後の巻き網船団が廃業 主力の以東底引きも燃料高が直撃 生産者守る対策急げ 2026 IUSTITIA.BG – Investigations 2009-2025 2026-05-29 07:48:17

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